鱗のある獣たち
(日本編)

 
 『山海経』の獺やリンによく似た生き物が江戸時代の日本にも現れた。全身を鱗に覆われ、手足に鋭い爪があり、長い尾を持っている。

 
豊年魚

 淀川に現れた謎の生き物。豊年魚と呼ばれ、これが現れると豊年になると言われた。
 この絵ではコントラストの関係でつぶれてしまっているが、全身に鱗状の模様が描かれ、腹には蛇のような腹板もある。手足に鋭い爪があり、尾は長く、尾の先は魚のヒレのようになっている。体の長さは 7尺 5寸というから、約 2.2メートルといったところだろうか? カワウソやセンザンコウにしては大きすぎる。この大きさ、凶暴そうな顔、水に棲むことなどを考えると、ワニに似ているような気がするが、江戸時代の淀川にワニ? いったい誰がもちこんだのだろう。

図版は『明治妖怪新聞』(柏書房)より
センザンコウ

 上の絵は、やはり江戸時代のもので、広渡湖秋の『鳥獣図鑑』に見えるセンザンコウである。淀川の豊年魚とくらべてほしい。尾の長さや鱗のある体、鼻面のみじかい人のような顔……たいへんよく似ている。大きさを無視すれば、豊年魚は江戸時代の知識人が考えるセンザンコウの姿と重なるようだ。

図版は『世界大博物図鑑5 [哺乳類]』(平凡社)より

 
 
雷龍
 

 寛政 3年 5月に因幡国城下に落ちてきた謎の生き物。雷龍とよばれている。全身は鱗に覆われ、胸には毛が生えている。長い尾があり、後足がなく、前足の先には長く曲がった爪がある。しかし、大きさは 8尺(約 2.4メートル)とあり、これまた大きすぎる。センザンコウは種類にもよるが、その大きさは尾も含めてせいぜい 1メートルといったところだ。
 

図版は『明治妖怪新聞』(柏書房)より

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