センキ
水中には黒い亀が多い。そのかたちは亀のようで鳥の頭、蝮のような尾を持ち、名は旋亀という。その声は木をさくよう。これを持ち歩けば聾にならず、底(手足のタコ)を治すのにもよい。 (南山経一の巻) 水中に旋亀が多い。そのかたちは鳥の首ですっぽんの尾。その声は木をさくよう。
(中山経六の巻)
絵・文とも『山海経』より |
鳥頭といえばくちばしがあるのが特徴。そこで口の形に注目して亀を見ると、くちさきが鈎のようになって鳥のくちばしみたいに見えるものが何種類かいる。また、蝮のような尾というのだから、尾の長い種類を探すと、オオクビガメというのが当てはまりそうだ。
この亀は大きな頭と、甲羅の長さと同じくらいある尻尾が特徴。この頭と尾のせいで、甲羅の中に身を隠すことはできないが、普通の亀にくらべて敏捷に動くことができる。 またこのカメは、危険に襲われると口からシャーシャーと音を立てて敵を威嚇するというのだ。 カメのくせに鳴くという旋亀の特徴をそなえている。 |
オオクビガメ(オオズガメ)
中国南部からインドの東部にかけて棲息。平たい甲羅と長い尾のおかげで段差のある場所も移動できる。亀のくせに金網すらのぼるというから驚きだ。 |
しかし、旋亀をオオクビガメと断定するのはどうだろうか。中国では東西南北の四つの方角を守る聖獣の存在が知られているが、北の守護神である玄武は蛇のまきついた亀として描かれる。
亀は殻に覆われて生殖器が見えないため、オスの蛇と交わって生殖すると考えられた。玄武はまさに蛇と亀の交わりを表したものだろうし、旋亀もまた、亀と蛇の交わりを説明したものかもしれない。 |
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