現代中国語動物名リスト<羊>
(超漢字&T表記版)


ウシ科ヤギ亜科ヤギ族 Caprini
 ここでとりあげるのは、ウシ科ヤギ亜科ヤギ族と呼ばれるグループです。この中に家畜のヤギとヒツジがふくまれます。ヤギとヒツジの違いについてはよく話題になることで、「どうもはっきりした違いはないらしいと」言い続けてまいりましたが、今回はちょっぴりつっこんでみたいと思います。

 ひとくちにウシ科動物と言いましても、ウシ科の中をさらに「ウシ亜科」「ダイカー亜科」「オリックス亜科」「レイヨウ亜科」「ヤギ亜科」に分けて分類する場合もあるようです。すると、ヤギ亜科の仲間を全部ヤギって呼ぶの、かな?

 いや、ちょっと待ってよ。
 ヤギ亜科の中は、さらに「サイガ族」「シャモア(カモシカ)族」「ジャコウウシ族」「ヤギ族」にわかれるのよ。いくらなんでもジャコウウシをヤギだって言い切れる?

 じゃあ、「ヤギ族」ってやつ全部がヤギなのかっていうと、残念ながら、そうとも言い切れないみたい。ヤギ族は、さらに「タール属」「バーバリーシープ属」「バーラル属」「ヤギ属」「ヒツジ属」に分かれるんですって。

 となると、ヤギ(Capra)属にふくまれるアイベックスやマーコールだけがヤギなの?
 でも、タールやバーラルも、かなりヤギっぽいんですよ!

 じゃあじゃあ、ヤギ族のタール属・バーラル属・ヤギ属をひっくるめてヤギってことでどうでしょう?
 う〜ん、でも、シャモア族のシロイワヤギもヤギっていうじゃない。

 ……で、この始末、どうつけましょう。
 このとおりヤギとヒツジの境目を決めるのはむずかしいですが、ここではヤギ族の仲間をとりあげます。

 ちなみに、中国語の名前を見ていると、ヤギ属(Capra)は「山羊」で、そのほかはみんな「羊」にしてるっぽいですね。


旧世界のヒツジ

ヤギ属 Capra

中名 山羊
和名 (家畜の)ヤギ
学名 Capra hircus
英名
Goat

 ヤギは紀元前 3500年頃には、もう家畜として飼われていたらしい。ウシ科ヤギ族ヤギ属の Capra hircus aegagrus などを品種改良して作られたのが「家畜のヤギ」だそうです。


中名 安哥拉羊
和名 アンゴラヤギ

アンゴラヒツジ

モヘアヤギ
学名 Capra hircus
英名
Angora Goat

 安哥拉はアンゴラの音訳。アンゴラ(アンカラ)原産だから。
 絹のような光沢のある長い毛を持っている。高級毛糸の原料。毛糸の種類にモヘアというのがあるけど、本来はアンゴラヤギの毛で作ったものを言うらしい。

 どうやら家畜のヤギの一品種らしいので、アンゴラヤギとのが正式っぽいです。でも、毛をとるものなので、ついアンゴラヒツジって呼んでしまうよね。でも、実物を見るとやっぱりヤギっぽく見えます。



中名 螺角山羊
和名 マーコール
学名 Capra falconeri
英名
Markhor

 角がワインのコルク抜きのように螺旋になっているから。
 マーコールというのはペルシア語で野生山羊の王という意味らしい。



中名 北山羊
和名 シベリアアイベックス
学名 Capra ibex
英名
Siberian Ibex

 アイベックスは、高山に棲んでる野生の山羊っていうか羊っていうか……ええとその、 アイベックスはヤギ属(Capra)なので、ヤギって呼んでいいと思うんだけど、あれを見て「あっ、ヤギだ!」って言う人少ないよね。ヒツジだって言う人も少ない気はするけれども。

 小さい頃、図鑑でシベリアアイベックスを見て、これ大角の旦那に似てるけど、シベリアって書いてあるよ。シベリアって、どこなの? ソ連(当時はソ連だったのよっ)? アルプスとぜんぜんちがうじゃない。ほんとにこれなの? と混乱した記憶あり。

 アイベックスの仲間は住んでいる場所によってシベリアアイベックス、ヌビアアイベックスなどと、別の亜種名で呼ばれていることが多い。大角の旦那はアルプスに住んでるアイベックスの一亜種らしい。


中名 西班牙山羊
和名 スパニッシュアイベックス
学名 Capra ibex

Spanish Ibex

 シベリアアイベックスの一亜種。
 西班牙=スペイン。おお、ATOK11でも、すぺいん→西班牙と変換するぞ。一太郎もかしこくなったもんじゃて。馬鹿太郎などと呼ばれた昔がウソのようじゃ。


タール属 Hemitragus

中名 喜馬拉雅塔羊

塔爾羊
和名 ヒマラヤタール
学名 Hemitragus jemlahicus
英名
Himalayan Tahr

 喜馬拉雅はヒマラヤの音訳。塔(塔爾)はタールの音訳。ヒマラヤ……はさすがにATOK11じゃ変換しないわね。


バーラル属  Pseudois

中名 岩羊
和名 バーラル

アオヒツジ

エセヒツジ
学名 Pseudois nayaur
英名
Bharal

 pseudは「偽の」という意味のラテン語で、piseudois で偽のヒツジという意味だとか(この件に関しては読者のxiao1000様からご指摘を受け、あらためて辞書をひいて確認しました。持ってるなら最初から辞書をひけ>わたくし。xiao1000様どうもありがとう)。nayaur は現地語(参考:エコロン自然シリーズ「動物2」保育社)とのことですが、何語なのか、またその意味は不明。おそらくは、チベットあたりの言葉でバーラルのことだとは思うのですが。青みを帯びた灰色の体をした野生の羊。山岳地帯に棲んでいるので岩羊。でも、なんで偽なのかな?


バーバリーシープ属 Ammotragus

中名 北非髯羊

髯羊
和名 バーバリーシープ

タテガミヒツジ

スナイロヒツジ
学名 Ammotragus lervia
英名
Barbary Sheep

 北アフリカに棲んでいる髭のある羊という意味。北非=北アフリカ。顎から首の下、前足の膝にかけて長い毛がある。ちなみにバーバリーとは「野蛮な土地」という意味で北アフリカのある地帯のことを、そう呼び慣わしている。

ヒツジ属  Ovis

中名 盤羊
和名 アルガリ

バンヨウ
学名 Ovis ammon
英名
Argali

 カタツムリの殻をほどいたみたいな、螺旋状の角を持つ野生羊。学名のammonはエジプト神話のアメン神にちなんだもの。アメン神の聖獣は角がカタツムリの殻のように巻くたぐいの羊で、アメン神自身も頭に羊の角をつけて描かれることから。なんで盤羊っていうのかはわかんない。


中名 西藏盤羊
和名 チベットアルガリ
学名 Ovis ammon hodgsoni
英名
Tibetan Argali

 アルガリの亜種。西藏=チベット。



中名 摩佛&T213A86;羊

摩佛倫羊
和名 ムフロン

ゲンヨウ
学名 Ovis musimon
英名
Mouflon

 摩佛&T213A86;はムフロンの音訳。イタリアのコルシカ島・サルジニア島原産の生き物で、ドイツやスイスに持ち込まれて野生化したものもある。家畜化されている羊は紀元前 6000年くらい前にムフロンなどから作られたので、ゲンヨウ(原羊)とも呼ばれている。
 学名の musimon は、音楽狂い という意味らしいんですけど、なんで?



中名 塞普路斯盤羊
和名 キプロスムフロン
学名 Ovis orientalis ophion
英名
Cyprian mouflon

 「塞普路斯 saipulusi」はキプロスの音写。



中名 沙寶盤羊
和名 ウリアル
学名 Ovis vignei
英名
Urial

 アフガニスタンやパキスタンに住む野生の羊。沙寶ってなんだろ。

新世界のヒツジ

ヒツジ属  Ovis

中名 大角羊
和名 オオツノヒツジ

ビッグホーン
学名 Ovis canadensis


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