件と書いて
くだんと読む
Re: 件の件についてなのです 投稿者:ちんじゅう - 2001/01/31(Wed) 17:50:51
掲示板のログを転載するついでに、
思いついたことがあるのでこれを機にまたもや人々を惑わしてみました。
山海経外典・件(くだん)
Re: 件の件についてなのです 投稿者:玉兎 - 2001/02/01(Thu) 17:27:21
ちんじゅう様、今拝見しましたが、おサルの事は大発見なのでは!
一昨年買った『幻想文学』56号「くだん特集」でもこのことには
触れてないですよね。
「中国牛妖幻想考」ってところに『山海経』『西遊記』の牛系動物や、
『天石斎画報』の人面牛身(1886年5月杭州で誕生)などは載ってましたが。
きっと新発見です。 わー、『幻想文学』に投稿したいー(笑)。
(東雅夫編集長は剥製を求めて別府へ行ったほどのくだん好きなんですよね)
中国のどこかには1800年頃の絵もあるんでしょうか。見たいですね(^-^)。
Re: 件の件についてなのです 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/01(Thu) 21:00:15
『山海経箋疏』を書いた人が「昔の研究家」って言ってるので、
猩猩が人面牛だったのは、もっとずーーっと前だったかも。
『箋疏』の著者は、猩猩はあくまでサルの仲間だって言ってるんですけどね〜。
そういえば、ちんじゅうはなにげなく「さとりの妖怪」のことを書いてたけど、
「さとり」こそ、猩猩にちょっと似てると思うのよね。サルっぽいし、人の心を読むし。
ぜんっぜん根拠ないけど、
・人の心を読む猿のバケモノ
・人の心を読む人面の牛
っていうふたつのイメージが、別々のルートで日本に来てて、
両方とも定着して「さとり」と「くだん」になってたりしないのかしら。
あいつらはぜったい兄弟ですわ(根拠は皆無だが(笑))。
Re: 件の件についてなのです 投稿者:まだ調べてた玉兎 - 2001/02/05(Mon) 17:24:27
ちんじゅう様、アツユはどうでしょうアツユは!o(^^;)
『山海経』ではただの人食い人面牛になりさがってますけど、
『淮南子』では人面蛇身の神々の仲間なのだとか。でも弐負って奴に殺され
かけてから身体が牛になって性格が凶暴になったそうなんです。
元が神だったなら未来を予言してもいいんじゃないかなぁ……なんて。
(そういえば、ちんじゅう様が「アツユ」の項で「別の機会に」って書いて
らっしゃる部分は、既にいずこかにアップされているのでしょうか?)
さとりと猩猩の近似も興味深いですね。やっぱり投稿したい(笑)。
Re: 件の件についてなのです 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/05(Mon) 21:07:10
うははは、別の機会にと書いてあるやつは、どれも手をつけてないんですの。
あれもこれもやろうと思いつつ、なかなか進みませんわ。
アツユなのですが、どうも重要人物らしいことはわかるのですが、
『山海経』に限っていうと、たいした手がかりはないのです。
「別の機会に」書く予定の部分は、アツユは竜の首で弱水の中に住む。ショウジョウ人名を知るの西にあり、そのかたちは竜の首のようで人を食う。(海内南経)
アツユがいる、竜首、これは人を食う。(海内経)
弐負の臣を危といい、危と弐負はアツユを殺した。そこで帝は(アツユを)疏属の山にしばりつけた。その右足には桎をし、両手と髪を後ろでしばり、これを頂上の木につないだ。(海内西経)
巫彭・巫抵・巫陽・巫凡・巫相がいて、アツユの尸をかこみ、それぞれが不死の薬をもって死期が迫るのをふせいでいる。アツユは蛇の体で人の顔、弐負の家臣が殺したもの。(海内西経)
以上4件。あと、
北海のなかに、後ろ手にしばりあげられた盗賊がいて、矛を持っている。これは常倍の補佐役で名は相顧の尸。(海内経)
ってのもあるけど、関係があるのかどうかちょっとわかんない。
Re: 件の件についてなのです 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/05(Mon) 21:17:51
『山海経』ではない別の本に出てくる話で、こんなのもあるらしいんです。中国の伝説を集めた本でみつけてメモしたんだけど、原典がなんなのかはちとわかんない(知ってたらおしえてくだされ)。前漢の宣帝(在位紀元前73年−前43年)の時代に、疏属山(陜西省)で石の蓋の下から手枷足枷をはめられた二人の人間が発見された。すぐさまふたりは長安の都に送られたが、その途中で石になってしまった。劉向という学者が「これは黄帝の時代、アツユの国にいた弐負と家来の危という者でしょう。ふたりは大逆の罪で処罰されましたが、黄帝は誅殺するにしのびず、ふたりを疏属の山に追放しました。このふたりは名君が現れた時にふたたび姿をあらわすと言われております」と言った。
しかし、宣帝はこの言葉を世迷い言と思い、学者をとらえさせて投獄してしまった。そこで劉向の息子でキンという者が弁護をかってでて「七歳の女の子に石をもたせ、このふたりをかわいがらせますれば、元の姿にもどるでしょう」と進言した。そのとおりにすると、石になったふたりは人にもどり、劉向の言うとおりの証言をした。
宣帝は劉向を牢から出して、息子ともども重い地位を与えた。「おまえはなぜこのようなことを知っていたのだね」という問いに、劉向は「山海経という書物に全て記されております」と答えたという。
この話だと、処刑されたのはアツユではなく、弐負とその家来ってことになってて、『山海経』とは矛盾してるんだけど、「悪いことをしたにもかかわらずぶっ殺されないで生かされている」というポイントは同じ。
ただ『山海経』に出てくるアツユは、苦しみが永遠に続くように生かされてるようにも読めるんだけど、上の話だと殺すにしのびなくて……という部分に重点があって、話がだいぶ変わっちゃってる。
Re: 件の件についてなのです 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/05(Mon) 21:30:32
こうやって読んでいて思いついたのは、件(くだん)のことじゃなく、ギリシア神話に似たような話があったんじゃんってことなのね。もうピンと来てると思うけど、神に禁じられた「火」を人間に与えたために、生きたまま岩山につながれて、鳥にはらわたをつっつかれてたプロメテウスの話。「生きたままつながれる」「大罪を犯したのに死をおしまれる」という部分が、みょーに似てますの。
そこまで考えて、珍獣はもうひとり似たような素性の人を思い出しましたわ。『創世記』で、神に禁じられた知恵の木の実をエヴァに与えた「ヘビ」なのよ。このヘビの正体ってシファーだかサタンだか呼ばれてるあいつなのでしょう? たしか、こやつは神に罰せられて深淵に突き落とされ、でも死なずに、いつか神にぎゃふんと言わせる日をねらってるんでしたっけか。
ものすごく、似てません?
Re: 件の件についてなのです 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/05(Mon) 21:35:07
もっとも『山海経』でプロメテウスに例えられるのは、アツユより、むしろ鯀(こん)という人なのね。大洪水がおこったときに、鯀は「ひとりでに増える土」を持ってきて、世界を補修して人を救ったんだけど、この作業をするのに神々の許しを得ていなかったので、罰せられて三本足の亀にされちゃうの。
でも、この話も時代によって変化がはげしくて、わりと知られた話だと、洪水をなんとかしたのは鯀の息子の禹(う)ってことになっていて、鯀は洪水を納めることができなかったので、罰せられて亀にされるみたい。
Re: 件の件についてなのです 投稿者:狂仙 - 2001/02/06(Tue) 01:03:57
ご無沙汰してます、ちんじゅう様。
えと、海内西経のアツユが殺されるとこですけど、高馬三良訳だと「アツユを縛りつけた」事になってますけど、
清の『山海経広注』版のさし絵(平凡社ライブラリー版に収録されているやつ)でふん縛られてる人の絵のキャプションに
「弐負之臣」って付いてるところをみると、もともと『山海経』の方でも疏属の山に縛りつけられたのは
「弐負の臣である危」
なんではないかと思います。
つまり、アツユ殺害の犯人として、ふん縛られてしまったわけですね。
ここの所、原文だと「これを縛りつけた」みたいな書かれ方してるので、訳者の人が勘違いしちゃったのか、
それとも何らかの根拠があって「中国では縛られたのは危だと思ってたみたいだけど、じつはアツユなんでは」
とわざわざカッコ付きで指定したのかもしれません。
あと、劉向が弐負と危のことを言い当てた話ですが、手持ちの『中国の神話伝説』(伊藤清司著、東方書店)って本によると、
唐の時代の『独異志』という本に載っているそうです。
実はうちのページでも弐負と危のことをちらっと書いた(って、考察も何もなしにエピソード紹介しただけですが)
ばかりなので、ちょっとシンクロニシティー感じてます(笑)。
Re: 件の件についてなのです 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/06(Tue) 01:34:03
おおっ、仙狂さんどうもなのですっ。『独異志』ですか、メモしておかねばねば。
そういえば挿し絵には弐負の臣ってキャプションがついてるんだけど、
同じ海内西経でアツユの尸ってのも出てくるので、
アツユが処刑されたように解釈されてるのかもですわ。
もし、繋がれたのがあくまで弐負の臣だとしたら、
弐負の臣がなんかの理由で自分の国の王だったアツユを殺し、
逆臣としてとらえられて幽閉されたってことになるのかな。
Re: 件の件についてなのです 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/06(Tue) 01:56:47
いま全釈漢文大系の『山海経』(『山海経箋疏』にもとづく)を確認したら、
こっちでは、つながれたのはアツユじゃなく、弐負の臣だと解釈して翻訳されてるみたい。
ただし、漢文を見ると、與弐負殺アツユ。帝乃梏之疏屬之山。
(弐負とアツユを殺す。帝すなわちこれを疏屬の山に梏す)
とあって、「これ(之)」がさしてるものがなんなのか、やはりわかりにくいです。
ただ、『箋疏』の著者はたぶん梏されたのは弐負の臣だと思っていて、
『独異志』のエピソードにもちらりと触れて、
「(石室から危が出てきたという事件があったが)議論をする者の多くは、危の死体にかたどったもので、本物の死体ではないと考えている。だが、思うに神霊の起こす怪異や変化から言うならば、通常の理屈では推測しがたい。ものが奇異な気を受け、ありそうもない現象を生んだときには、通常の成り行きでは推論できないし、それに近い可能性も想像できない」と言ってます。ぜったい生き返ったんだと言い切ってるあたりにはげしく親近感を覚えますわ(笑)
Re: 件の件についてなのです 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/06(Tue) 01:59:37
ところで、うちでこんなにまともに『山海経』の話がもあがったのは、珍獣の館はじまって以来の大事件だったりして。うひひひ。なんだったんだろう、このサイトの今までは?!
Re: 件の件についてなのです 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/06(Tue) 11:51:29
あっ、よくみたら名前書き間違えてる。
ごめんなさいませ>狂仙さん
Re: 件の件についてなのです 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/06(Tue) 12:52:35
似たような例をもうひとつ思いだしたですわ。
そいつはすっごく頭の切れる神で、なんでも要領よくこなすんだけど、
常にうがった目でものを見てるせいか皮肉屋で嫌われ者。
あるとき宴会に呼ばれていき、神々がパーティーのホストを大げさにほめそやすのに腹をたてて、
その家の召使いを腹立ち紛れに殺してしまう。
神々は、こいつのいたずらに、これまでにも充分腹をたてていたので、
今度こそゆるさんぞーと追いかけ回し、ついには洞窟につなぎ、
そいつの頭の上に毒蛇を設置し、タラリタラリと落ちてくる毒液で、
じわじわと痛めつけることにしたのね。
そいつには献身的な妻がいて、大きな器で毒液をうけ、夫を救おうとするんだけど、
中身を捨てるときだけ、毒液が直にかかってしまい、
そのたびに夫が身震いするので世界には地震が起こる……
という話なのですが、
巫さんたちが守ってる部分にちょっと似てるかも。
誰のことかというと、有名なのでわかっちゃってる人が多いと思うけど、
北欧神話に出てくるロキのことなのね。
ロキも神々からは最悪に嫌われてるけど、
一説によれば人間を形作ったのはロキだったらしいし、
ロキがいなければ切り抜けられなかった危機も多く、
プロメテウス的な側面がちょっとあるの、かも。
Re: 件の件についてなのです 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/06(Tue) 17:47:55
で、ロキまでひっぱりだしてきて思ったのは、
ロキってもしかしたら、「さとり」と似てる?
読心術の才能こそなさそうだけど、物事の裏側を見抜いて、
だまってりゃいいのに何かにつけて暴露してるらしいのです。
たとえば、誰からも愛される豊饒の女神イズンのことは
ロキにいわせりゃ「兄のかたきを抱いた男狂い」
風や海の動きをあやつる航海者の守護者ニョルズのことは
「妹と寝て子をなした男」ですって。
この調子で有力な神々の触れられたくない過去を
かたっぱしから暴露しまくる男なんですの。
このイヤらしさ、さとりに似てる……かも。
さとりに似てるってことは、もしかして件にも似てる……のかしら、どうかしら。
ロキは未来予知もしない気がするけど、
時が満ちると自由になって神々を相手に大戦争を起こす予定だし、
件が戦争を予言する者だとしたら、ロキは戦争のきっかけになる者で、
ちょっと似てるような似てないような。
Re: 件の件についてなのです 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/06(Tue) 17:54:13
ああ、ついでに思い出してしまいましたことよ。
ロキってば創世記のヘビと同じ様な真似もしてますわね。
豊饒の女神イズンは、それを食べると決して老いない「常若のリンゴ」を持っているんだけれど、
あるとき巨人の王がロキをそそのかして、イズンを誘拐しちゃうのよ。
おかげで神々は老い始め「それもこれもロキのせいなのじゃ」と大激怒。
ロキはしかたなく、巨人の国にしのびこんで、
イズン女神を木の実に変えて盗み出すのですわ。
(あ、この話、ジャックと豆の樹にも似てる)
Re: 件の件についてなのです 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/06(Tue) 18:06:56
あー、また思い出しただわっ!!
インド神話に、海をかきまわしてアムリタ(不老不死の妙薬みたいなやつ)を作り出す話があるんだけどもね、
たしか巨大な山を撹拌棒にして、ヴァースキというヘビだか竜だか長いものを山にまきつけて、
ごっきゅごっきゅと海をかきまわしたらしいのね。
これってぜったい『創世記』のヘビの話と同じものだと思うわけよ。
ほら、楽園には知恵の木の実だけじゃなく、命の木の実もあったっていうし。
棒(樹)にヘビもいるし。
ついでにいうと、アムリタの話はイズンが誘拐されたときの話と似てるかも。
海をかきまわすとき、いつも喧嘩してるインドの神々と阿修羅が協力してやったんだけど、
いざアムリタが出てくると、阿修羅が持ち逃げしちゃうのよ。
それを変幻自在のヴィシュヌ神が、女の子にばけて取り返すんだけど、
そういえばロキっていろんなものに変身するの上手だし、
女にばけて妊娠までしたことがあるんだったはず!
Re: 件の件についてなのです 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/06(Tue) 18:21:10
それで〜、話は『山海経』にもどるんだけど、
海内西経をよむと、アツユが死なないように巫さんたちに見張られてる場所の西にね、 開明獣 がいるわけ。
開明獣って、昆侖の番人なんだけども、昆侖って、中国でいう楽園じゃな〜い?
さらに、開明獣の北にはいっぱい樹があって、中に「不死の樹」ってのがあるわけだよ。
しか〜も、不死の樹を守るように、鳳凰や鸞鳥が頭に盾を持ってるの。
『創世記』で、アダムとエヴァが楽園から追放された後、
もう誰も入ってこられないように、神はひとりでにまわる剣とケルブ(天使の一種)たちに見張らせたっていうんじゃなかったっけ?
Re: 件の件についてなのです 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/06(Tue) 18:28:08
何が言いたいかっちゅーとだね、
アツユと弐負の臣の話は、もしかすると世界樹伝説から派生したものなんじゃないかと思うわけよ。
世界のどまんなかにでかい樹(もしくは山)があって、
そこには不死の妙薬や木の実があったり、楽園があったりするんだけど、
誰もがそのすばらしさに享受できずに暮らしているところへ、
誰かがやってきて禁断の木の実(薬)をとってきて分け与える話。
そのせいで人は豊かになるんだけど、同時に災いも生じて、
平和だったせかいに争いが満ち足りいろいろしちゃったり……
ああ、そろそろ不安になってきたぞ。
ここで読んだ話を他言無用にしろとはいわないけれど、
これを読んでる皆様がたよ、もし少しでも感心したら、
「珍獣様がこうおっしゃっておられたよ」と
付け加えて引用するように、ひとつ頼むのだわ。
ロキのお話 投稿者:鉄猫 - 2001/02/07(Wed) 12:29:46
たしか8本脚(もしくは8本の蹄)の馬「スレイプニール」のお母さんが
ロキだったと記憶しておりますが……
ワルハラ城の城壁工事のお話がらみだったかと
Re: 件の件についてなのです 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/07(Wed) 14:05:18
そうそう、そうじゃった。ロキは人間の女の子に化けたんではなくて、
牝馬にばけて、スヴァジルフェーリとかいう牡馬とまじわってスレイプニールを生んだのでしたかのう。
たしか、神々と謎の大工が
「3日のうちに城壁を作り上げたら太陽と月とフレイヤ女神を大工に与える」
という賭をするんだけど、
神々は3日でできるわっけがないとたかをくくっていたら、
大工がつれてきた牡馬(スヴァジルフェーリ)がえらく働き者で、
2日のうちにほとんどできちゃった。
あわてた神々はロキになんとかしろと命じるんだけど、
(それというのも、賭の発端もロキの口車だったから)
ロキは牝馬に化けて大工の馬を誘惑してひっぱりまわし、
砦が期日までに完成しないようにした……という話、でしたっけ?
Re: 件の件についてなのです 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/07(Wed) 14:24:50
そういえば、↑の話、インドのアムリタ伝説とかなり似てるかも。
アムリタの誕生をもうちょっと詳しくまとめると、
・神々と阿修羅が、山を棒に、ヘビを綱にして海をかきまわす
・海の中から何でも生む雌牛や、輝く白馬や、富と幸運のラクシュミー女神とアムリタ(不死の妙薬)など宝物が出てくる。
・阿修羅がアムリタを持ち逃げしようとした
・ヴィシュヌが女の子(モーヒニーという名前)に化けて阿修羅を誘惑し、奪い返す
・神々は自分たちだけでアムリタを飲んでしまおうとする
・阿修羅のひとりでラーフという者が、神にばけて一緒にアムリタを飲もうとする
・太陽と月が「その男は阿修羅だ」と神に告げ口をする
・ヴィシュヌが起こってラーフの首をちょんぎってしまう
・ところが、喉のところまでアムリタを飲みかけていたラーフは中途半端に顔だけ死なない体になっていた
・以後ラーフは太陽と月を恨んでおいかけまわしている(追いつくと日食・月食になる)
ってな感じなのですが、
ヴァルハラ宮の城壁を作る話にかなり似てると思うのです。
大工が太陽と月と女神をほしがっていたりするところなんかが。
Re: 件の件についてなのです 投稿者:水池竜樹 - 2001/02/07(Wed) 14:29:06
初めまして、以前から見させていただいておりましたが書き込みは初めてさせていただきます。
私の知っている話でも、すこしは種になればと思いまして・・・。
件に関して、アツユとの関連の話が出ておりましたが、アツユの元は人面蛇身だったが今は人食い牛、
という話で思い出したのが、三皇五帝の神農の事です。
神農は牛頭人身で、いろんな草を味見して薬草を調べたという医薬の神様ですが、古い時代は人面蛇身として描かれた事もある・・・という話を聞いた事があるのです。
(資料が手元に無く出典が特定できないのが情けないですが)
蛇の要素から牛の要素のプロセスの共通と、医薬の神と不老不死のイメージが重なる点から、
ひょっとしたら関係があるのかも・・・と思ってしまいました。
また、蛇と不老不死薬ですが、日本にも変若水と死水という話がありますね。
神様が、人間には不老不死をもたらす変若水を、
悪い蛇には死水を浴びせる様に使いに命じたのだが、
間違って蛇が変若水を浴びてしまい、蛇は不老不死になり、
人間は早死にするようになったという話です。
宮古島の伝説だったと思います。
Re: 件の件についてなのです 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/07(Wed) 14:44:10
ところで、
北欧神話とか旧約聖書とか、濃い人が腐るほどいそうな分野なので、
細かいこといいはじめると大変なことになるのでここらで釘さし。
今回特にこだわってほしいのは、登場人物の細かい名前じゃなくて、
あくまで『山海経』に見える伝説との共通点なのです。
そういうふうに書くと『山海経』を知らないとまじれないと思うでしょう。
もちろん、まじらなくってもべつにいいんです。
今までも誰もこういう話をしに来ませんでしたからね、ほほほほ。
でも、知ってるといいかっていうと、どうなんでしょうね。
珍獣も中国神話をろくに知らないのでどうともいえませんわ。
『山海経』という本を、一度でも開いてみたことがある人なら、
あれがどんなにつまらない本なのか知ってるはずです。
もともと物語として書かれたものじゃなく、
あくまで絵地図のキャプションみたいなものだから、
まるで箇条書きにされたメモみたいに、味もそっけもない文体で、
「何が書いてあるのかわからない」
っていうのが正直なところじゃないかと思うのです。
(挿し絵なし版のテキストを開いた人はとくに)
でも、インドや中東やヨーロッパなどの、
関連ありそうな文化圏の伝説とならべて見ることで、
無味乾燥な『山海経』が、ぐんと親しみやすくならんかなあと。
逆の視点からいえば、ヨーロッパ固有のものかと思ったら、
実は中国に似た話があったよ、という新発見にもなるかも。
……なんて話を、ほんというと珍獣様は書くのが嫌いなのね。
だって、なんか手品の種をさいしょに説明されてるみたいじゃん?
商売で書いてるんなら売れるようにアピールせねばならんのでしょうが、そうじゃないし、
だいたい、こんなの書いてもよまねーでしょう、たいていのひとわ。
わかんなかったらこなくていいよっていうのが一番楽だし面白いの(笑)
読書の類は、たまたま見たら面白かったって出会いが、
いちばん面白くてすんなりはいりこめる方法だからねえ。
しかも、視点が固まってくると飽きるので、
伝説にしか興味ないよとか、生き物にしか興味ないよとかいわれると、
あっそう、それなら他にすばらしいところがたくさんあるから
ほかいってねってなっちゃいそうだし、わたくし(汗)
Re: 件の件についてなのです 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/07(Wed) 15:09:14
水池竜樹さんいらっしゃいませ。
がつがつ書いてたら途中に書き込みが増えてるのに気づきませなんだ(汗)
神農が人面牛で、古くは人面蛇身として描かれた事もあるというのは興味深いですっ。
『山海経』では、アツユと弐負とその家来が、
具体的に何をしたのかはっきり書いていないんですが、
お話としては、大きく2パターンに別れると思うんです。
1.
アツユはとにかくすっごく悪い奴で、弐負と危によって倒され、死なないように苦しめられている。
弐負と危は、アツユの治める国の人だったので、君主殺しの罪でとらえられ、幽閉された。
2.
アツユはそんなに悪い奴じゃなく、プロメテウスのように人のタメに何かしたんだけれど、それがなんらかの禁忌にふれたので、弐負と危によって倒される。
もし、神農とアツユに関連があるとしたら、
やはりアツユをたんなる罪人として取り扱うのは面白くありません。
たとえば人間に不老不死の知恵を授けようとしたものの、
神々は「幼き人間を死なない体にするのは時期尚早」と判断し、
先走って実行にうつしたアツユを処刑しないわけにはいかなかった……とか、
そんな物語がありそうな気がしてきました。
Re: 件の件についてなのです 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/07(Wed) 15:44:18
沖縄の若水の伝説、パソコンの中をあさったら昔メモしたのがでてきました。
(何からメモしたのかは忘れました)蛇と若水(沖縄)
むかしは人間も蛇のように脱皮して若返る世の中だった。その頃は蛇も人間も同じようにくらしていたが、どっちが先に節祭りの若水をあびられるか賭をして、負けた方は歳をとって死ぬようになるし、勝てば今まで通りいつまでも生きていられるという決まりにしたそうだ。
人間は蛇ごときにまけてなるものかと、節祭りの朝はやくに六日川へでかけていったが、そこにはもう蛇がいて水を浴びていた。それで、人間は死ぬようになったということだ。
水池竜樹さんが読んだのとちょっと筋がちがってますが、
蛇が若水を浴びて若返るようになったのはいっしょですね。
たしか、これと似たような話(蛇が脱皮するたびに若返る)って話は、
中国にもあったような気がするんだけど、
何で読んだのかすっかり忘れました(笑)
Re: 件の件についてなのです 投稿者:鉄猫 - 2001/02/07(Wed) 18:50:46
蛇と不老不死の話は、たしかバビロニアにもあったかと
エンキドゥが死んでしまったのを見て絶望したギルガメシュが、不老不死の薬草を海(湖?)から探し出したが
それを蛇に食べられてしまうというお話です
もちろん、蛇は不老不死に(脱皮するように)なってしまいます
Re: 件の件についてなのです 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/07(Wed) 21:18:45
おおっ、ギルガメシュの話はそんなふうに続くのでしたか!
珍獣が読んだテキストは、楔形文字からそのまま起こしたみたいな
おけつのほうが欠けて意味不明な感じになってましたが、
たしか不老不死の薬をもとめて、ギルガメシュはどっかへゆくんだったような。
そこには大洪水のとき人を救ったジウスドゥラ(聖書だとノアにあたる)がいて、
不老不死の秘密についてなんか言うんだった、かな。
蛇が若返る話がバビロニアにもあるってことは、
やっぱり竜(蛇みたいに長いもの)の首を持つアツユと不老不死には
なんらかの関係がある気がするですわ〜(T-T)/
Re: アツユと不老不死の秘密(あと件も) 投稿者:水池竜樹 - 2001/02/08(Thu) 00:36:46
再び書き込みです。
神農が蛇身の神様として描かれている時期があったという書き込みをしましたが、
黄帝と派手なケンカをした事で有名なこれも牛頭人身の「蚩尤」も、
蛇身の神とされる事があるようです。(神農の子孫だからある意味当たり前かもしれませんが)
蚩尤はともかく、神農が人面蛇身と書かれた理由は出生を見たらなんとなく分かりました。
神農の母親は、神龍の徳に感応して身篭り神農を生んでるんですね。
で、神農と蚩尤、両方が元蛇身の神様で、その後、牛となったと考えると、
アツユも何かしら共通点が・・・と考えてしまうわけですが、
蛇神=龍神とすれば、実は黄帝も龍の化身とされる事があるんですね。
神農も蚩尤も黄帝に負けており、それらが牛になったとすれば、アツユも
戦いに敗れた非主流派な神様だったりするのかもしれません。
件もそうやって、他の神様に敗れたまま忘れ去られて妖怪にまでなっちゃった神様・・・
だったりとか考えると、人面牛の姿が逆に哀愁を誘ったりしますね(笑)
Re: アツユと不老不死の秘密(あと件も) 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/08(Thu) 00:59:46
ふうむ、負けて牛になる法則があるのですか。
そういればインド神話に、水牛に化けて逃げ出そうとする阿修羅を
ドゥルガー女神が取り押さえるという場面があったような。
牛はまつろわぬ勢力の象徴だったりするのでしょうか。
インドの場合、シヴァ神も牛をつれてあるいてるけど、
シヴァはかなり反社会的な部分を持ってる神だし。
ちょっとヨタ 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/08(Thu) 01:14:01
そういえば、ミノタウロスみたいに、
牛頭人身のヤツらは強そうで哀れっぽくはないのですが、
件のように人面牛となると、やたらなさけないのよね(^^;
人面犬とか人面魚なんかも腰くだけって感じ。
そういえば、件の伝説ってどんなのがあるのかしら。
生まれてくると未来(とくに戦争の勃発)を予言して3日で死ぬ……ってのが基本だった気がするけど、
他にはないのかしら。
Re: アツユと不老不死の秘密(あと件も) 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/08(Thu) 11:26:18
『山海経』で蚩尤について書かれた部分は……人あり、二匹の黄色い蛇を珥とし、二匹の黄色い蛇をにぎる。名は夸父。后土は信を生み、信は夸父を生む。夸父はわが力も量らずに太陽を追わんとし、禺谷でこれに追いついた。(のどがかわいたので)河に水を飲まんとして水たらず、大沢に走らんとして、まだ到着せぬうちに(かわいて)死んでしまった。応竜は蚩尤を殺し、さらに夸父をも殺し、やがて南方に去って住んだので、(応竜のいる)南方には雨が多い。(大荒北経)
蚩尤は兵器をつくって黄帝を伐つ.そこで黄帝は応竜をしてこれを冀州(国のまなか)の野に攻めさせた。応竜は水をたくわえ、蚩尤は風伯と雨師をまねき、暴風雨をほしいままにした。そこで黄帝は天女の魃をあまくだした。雨はやんでついに蚩尤を殺した。ところが魃は、天にのぼりかえることができなかったので、魃居るところには雨がふらない。叔均はこのことを帝に言上したので、後かの女を赤水の北に住まわせた。叔均はそこで田祖となった。ところが魃はときどき逃げ出すので、これを追わんとするものは告げていえ、「神よ、北にかえりたまえ」。そしてまずは水路をきれいにし、大溝小溝をよくさらえよ。(大荒北経)
木あって山の上に生ず、名は楓木。この楓木は蚩尤が棄てた桎・梏(が化したもの)である。これを楓木という。(大荒南経)
応竜は南極に住み、蚩尤と夸父を殺したので、天に復帰することができなくなった。ゆえに天下しばしば旱する。旱したときに応竜の状をまねると、やがて大雨がふり出す。(大荒東経)
これを見ると、蚩尤もアツユ(または弐負)と同じようにとらえられてつながれてたことがあるみたい。
反逆者を捕まえたら、見せしめにつないで痛めつけるのはお約束なんでしょうか。
ギルガメシュ叙事詩の蛇 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/08(Thu) 17:18:23
ギルガメシュ叙事詩で、
不老不死の薬食べちゃった蛇の出てくるところ。
ウトナピシュティム(ジウスドゥラ)が教えてくれた草シープ・イッサヒル・アメルを手に入れ、
大喜びしてる場面……ギルガメシュは船頭ウルシャナビにむかって言った
「ウルシャナビよ、この草は<特別な>草だ
人間はこれでもって生命を新しくするのだ
私はこれをウルクの城へ持ち帰り、[ ]草を食べさせよう
その名はシープ・イッサヒル・アメルという
私も食べて若かったころにもどるとしよう」
二十ベール行って彼らは食事をした
三十ベール行って彼らは夜の準備をした
するとギルガメシュは水が冷たい泉を見た
彼は水のなか降りていって水浴をした
蛇が草の香りにひきよせられた
[それは水から]出てきて、草を取った
もどって来ると抜け殻を生み出した
そこでギルガメシュは坐って泣いた
彼の頬を伝って涙が流れた
[彼は]船頭ウルシャナビの[手を取って言った]
「だれの[ために]、ウルシャナビよ、わが手は骨折ったのだ
だれのために、わが心の血は使われたのだ
わたし自身には恵みが得られなかった
大地のライオンに恵みをやってしまった
『ギルガメシュ叙事詩』より
矢島文夫・訳
ちくま学芸文庫
1998年2月10日初刷
900円+税
ほんとだ、蛇が食ってる!
この本3年も前から文庫になっとったんか。
この調子で「古代オリエント集」に入ってるやつが
全部文庫にならんかなあ。エジプトの話なんかかなり好きなんだけど。
Re: アツユと不老不死の秘密(あと件も) 投稿者:水池竜樹 - 2001/02/09(Fri) 01:27:33
アツユですが、説明が「中国妖怪人物辞典」(講談社)にのってました。
これの記述だと、アツユは黄帝側の天神で(この頃はまだ人面蛇身)
弐負は危に「そそのかされて」二人でアツユを殺した・・・・・・となっており、漢の宣帝の時代に二人は幽閉から解放された・・・となってます。
(この漢代のエピソードは郭璞の山海経の注みたいですね。)
その後、あわれんだ黄帝が、巫師に命じて(尸を囲んでた人たちですね)
アツユの復活の儀式を崑崙で執り行うんですが、失敗だったのか、
性格が復活後すっかり変わってしまったアツユは、崑崙の麓を流れる
弱水に飛び込み、水棲人食い牛の化け物になった・・・という事です。
(ちなみに生き返った段階では性格が変わっただけで、怪物になった原因は、
弱水に飛び込んだからみたいです。弱水は「西遊記」の流沙河と同じ扱いをされるようですね。)
生き帰って性格が急変ってのはS・キングの「ペット・セメタリー」なんかを
彷彿とさせますけど、アツユはこの後、射日神話で有名なゲイに退治されます。
ゲイは、崑崙の西王母からもらった不老不死の薬を、奥さんの嫦娥に月に持ち逃げされるエピソードがありますねぇ・・・。
いろいろと謎が謎を呼ぶといった感じですね。(クダンはどこへ?(笑))
Re: アツユと不老不死の秘密(あと件も) 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/09(Fri) 03:19:11
ふうむ、なるほど。郭璞の注を採用すると、悪いのは弐負のほうで、
アツユは被害者なのですか。
平凡社ライブラリーの『山海経』で
わりとアツユよりな解釈をしてる(と珍獣は感じた)のは、
郭璞の注によってるからなのかな。
中国の神話を集めた本って、
いろんな古典に断片的な情報としてあるものを、
ひとつの話にまとめて紹介してる事も多いみたいだから、
ナントカ辞典の説明って読みやすい反面、
カンニングしてるみたいですねえ、わはは。
郭璞の注そのものを読んでみたいです。
どんな風に書いてあるのでしょうね。
生返ると性格が違うっていえば、
珍獣はゾンビを連想しましたわ。
ブードゥー教の国では、いまだにゾンビ事件が発生するそうですが、
生返ると記憶を失ってたり、性格が違ってたり、するんだったような。
Re: アツユと不老不死の秘密(あと件も) 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/09(Fri) 12:03:26
アツユが弱水につかって牛になったっていうのでおもいついたんだけど、
もしかして、アツユは牛じゃなくワニになったんじゃないかしら。
一本足の牛 でも書いたけれど、水棲の牛=ワニだとしたら、ものすごく話がすっきりしません?
アツユはなんらかの理由で殺され、なんらかの理由で復活したものの、
昔のような強大な力を持っていなくて、
地をはいまわり人を襲うワニになりさがってしまった。
このワニ、中国ではダ竜と呼ばれることもあるので、
竜(蛇)身の神のなれの果てとしては、かなり適役なんじゃないかと。
Re: アツユと不老不死の秘密(あと件も) 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/09(Fri) 12:07:55
もっとも、単なる牛っていうのも捨てがたい魅力が。
たぶん、牛はまつろわぬ強大な力の象徴で、
しかもそれは、どうにかすると飼慣らして使役することも可能なわけで、
大暴れしてた者が倒されて牛になるというのは、
牛のように飼慣らされてしまえという呪術的意味合いが……あるわけないか(笑)
Re: アツユと不老不死の秘密(あと件も) 投稿者:舅急病でバタバタしていた玉兎 - 2001/02/09(Fri) 14:33:01
ひゃー、数日アクセスできないでいたら、アツユ問題がこんなに発展を!
エッダにギルガメッシュにインド神話まで出て来てるなんて。
おまけに玉兎の月のお友達・嫦娥さんの旦那がアツユ殺しの犯人(^^;)。
ほんとに細切れで知識だけ取り入れてると物語が分からないものですね。
神農や蚩尤と合わせて図書館で神話方面を復習して来なければ。
他の神話方面といえば、前に書いた『幻想文学56』には、
ペルシャ神話の半牛半人「ゴーベッド・シャー」なんてのも紹介されてますね。
世の終わりに屠られる生贄牛「スリソーク」(<不死の霊薬)の守護者だそうです。
あと、ローマ帝国時代に興ったミトラス信仰の中では、ゾロアスター教の
アフラマズダが創世記に創造した聖牛をミトラに殺されてるそうです。
牛がらみ神話&伝説って地球規模で渦巻いてますね。
(でもそのミトラが東洋に来てマタラになったとか、京都広隆寺の牛祭は
その流れだとか言われると、どこまで信用していいやらですが……)
牛が象徴するものとして有名なのは「春」とか「大地」だとかだそうですが
まつろわぬ荒ぶる力っていうのも十分ありそうですよね。
負け組のなれの果てが牛、っていう例がどこかに無いかなぁ……
Re: アツユと不老不死の秘密(あと件も) 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/09(Fri) 16:06:38
珍獣の館はガクジュツサイトじゃないので、参考資料のひっぱりかたが尋常じゃないのです。
ふつー、いきなり北欧神話とかいいはじめない気がするけど、
そんなに滅茶苦茶ぜんぜん関係ないかっていうと、
たぶん関係あると珍獣様はにらんでいるですわ。
ところで、『幻想文学』にでてくるペルシャ神話とかゾロアスター教の神話ってのは、
件関連でひっぱってきてるのですか?!
おーまいがっ、珍獣様もかおまねけね。
っていうか、ほんの冗談で「メソポタミアには人面牛の神様が」なんて言ったのが、
そんなに無関係でもないってことか……ううむ。
それはともかく、お舅さんだいじょうぶなのですか?
Re: アツユと不老不死の秘密(あと件も) 投稿者:水池竜樹 - 2001/02/09(Fri) 18:34:21
実は私、竜に関して調べたり良くするんですが(山海経もその一環ですね(笑))
負け組が牛というのは、西のほうへ行くと逆転しちゃって勝ち組みになってるような気がいたします。
ユダヤ・キリスト教の神様が、牡牛(って言い切るとマズイのかもしれませんが)って説は結構ありますし。
自分が牡牛になったり、生贄に牡牛を捧げさせたりするギリシャ神話のゼウスは、
半人半蛇の怪物神テュポンを倒していますし。
この辺は、農耕とか遊牧とか生活形態によっても違いが出たりするのかも。
メソポタミア、中東、南ヨーロッパ全域に発生した地母神信仰では、蛇も牛も
大地の豊穣を象徴する地母神のシンボルになってたりしますよね。牡牛の角があったり、蛇を手に持っていたり。
はっ・・・そういえば山海経にも蛇が耳から出たり、手に持ってたりする神様が結構いらっしゃるような・・・(笑)
Re: アツユと不老不死の秘密(あと件も) 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/09(Fri) 19:19:16
たしかに文化圏のちがいで負け組の生き物はかわりそう。
エジプトなんかも退治されるのは蛇で、牛は神の化身なので勝ってる気がするなあ。
四大天使のひとりミカエルは、竜をふんづけてる姿で描かれたりするし。
インドだとかなり牛は大事にしてるけど、
でも、蛇(竜)もそんなに虐げられてないような。
(牛ほど偉そうにはしてないかもだけど)
とりあえず中国だと竜(蛇)が勝ちで、牛は負け気味という感じ?
少なくとも竜が勝ち組なのはあたってると思うんだけど、
竜が勝ち組のシンボルならば。
神々の禁忌をやぶって人に生命の秘密を与えた者のことを、
竜(蛇)のままにはしておけないよね。
別の生き物に変えておとしめないと話がおさまらない感じがする。
Re: アツユと不老不死の秘密(あと件も) 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/09(Fri) 19:20:57
ふと思いついたんだけど、
ヨーロッパにも負けの例はあるよね。
幽閉された牛人間ミノタウロスなんか、かなり負けでは?
ミノタウロスって、ミノス王のお妃が不倫のすえ生んだ子供なのよねえ。
ミノス王にとっては、生かしておいたら自分の血筋じゃないものが王位につくってことなのでわ。
しかも、不倫の相手が有力者だったりすると国が乗っ取られるかも。
でも、仮にも王子なので、おいそれとぶっ殺せないし、
仕方なくバケモノってことにして閉じこめた……としたら、
これは完全に負け(でも油断すると逆転されそう)。
これをもってヨーロッパでも牛劣勢ってことじゃなくて、
こういう例外もある、ということかしら。
Re: アツユと不老不死の秘密(あと件も) 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/19(Mon) 09:33:03
掲示板を読んだっていう人からメールが来て、
件にまつわる地名が日本に二カ所あるらしいっていうんだけれど、
どこだかはわかんないんだって。
1カ所はひろこさんが言ってた東京の九段のことだと思うんだけど、
もう1カ所はどこかしら。
そこも、名前だけじゃなく、件の伝説に関係してそうな場所なのかしら。
Re: アツユと不老不死の秘密(あと件も) 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/19(Mon) 09:34:09
そういえば、玉兎さんの書き込みに、
件の剥製をさがしに行った人がいたようなこと書いてあったけど、
結局みつかったのかしら??
Re: アツユと不老不死の秘密(あと件も) 投稿者:息子入園準備で慌てる玉兎 - 2001/02/19(Mon) 12:08:47
クダンの剥製探しですか?別府まで行った東雅夫・柴田亜美ペアの顛末は
『ビッグコミックスピリッツ山田1号』にマンガの形で載りましたので、
お読みになりたければお送りしますよ?(郵送先ご指定下されば)
ちなみに結論から言うとお二人は剥製を発見できませんでした(笑)。
クダンな地名は心当たりが無いですねぇ。岡山県の牛窓町は出没した巨大な
牛鬼が地名の由来だそうですが、そういった辺りのことでしょうか……。
ところで神話伝説の牛関係を漁っていたらバーバラ・ウォーカーの
『神話・伝承辞典』の「牡牛」の項に「もちろん牡牛も他の生贄同様に
予言の力があるとされていた」とかいう記述を発見して大喜び!
で、裏を取ろうと調べてたのですが……裏がぜんぜん取れません、とほほ。
牛に予言能力があったなんて書いてるのバーバラさんだけみたいです。
バーバラさん、一体どこからそういう情報を入手したのかなぁ。
……と、クダンの探索はなおも続くのでした。
Re: アツユと不老不死の秘密(あと件も) 投稿者:胃腸が弱りまくって今日も劇下痢の珍獣 - 2001/02/19(Mon) 19:11:46
ううむ、やはり見つからなかったのね。
漫画は読んでみたいんだけど、そういえばクイズの景品(まだ答えは確認してないんだけど)を送るついでがあるから、
そのときに忘れてなかったら送ってくださいませ。
で、牛の犠牲に予言の力ですか。
うーん、占いの前とか、御神託をえる前の儀式に、
動物の犠牲はあっちこっちでやってそうな気はするんだけど、
犠牲にされる動物が直接未来予知に関係してたりもするのかしら??
あ、でも、犠牲って書いて思ったんだけど、
犠牲って、羊でも犬(けもの)でもなく、牛へんよね。
梏(手かせ)、犂(すき)……など、自由を奪うことを連想させる文字も多かったりして。
これが羊だと、美(羊が太っておいしそうなさま)とか、養(羊に食べさせる)とか、
食べることと関係してる文字が多かったりするのよね。
中国では羊も犠牲(いけにえ)にしてたはずなんだけど、
いまいち牛と羊でイメージが違う感じはするわね。
Re: アツユと不老不死の秘密(あと件も) 投稿者:厠所から離れられないちんじゅう - 2001/02/19(Mon) 22:03:02
↑なんかわかりにくい文章になってしまっているけれど、
ようするに、同じ犠牲にする生き物でも、
羊と牛ではイメージが違うし、ひょっとして牛には特別な何かが……と思ったんだけど、
改めて漢和辞典を眺めたりしてみたものの、
未来予知と関係しそうな漢字はみつかりませなんだ。
人牛伝説殺人事件 投稿者:たけし 投稿日:2001/02/20(Tue) 02:19:51
ええと、とりあえず蚩尤の事は置いておきます。本日、東奔西走したところ、僕が件に関する地名を知り得たのは宗田理の「人牛伝説殺人事件」という小説であったことがわかりました。地名が事実かどうかは正直いってわかりません。少なくとも東京の九段ではありません。高知の九反田でもありません。もっと「うわ、もろ件じゃん」的な名前だった気が・・・。一ヶ所は、福島県郡山市の近辺だったと思います。もう一ヶ所は確か、島根か鳥取だったと思います。残念ながらその本を入手することは叶いませんでした。なんだかんだ言って結局役に立ちませんね。おれって使えねー。
Re: アツユと不老不死の秘密(あと件も) 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/20(Tue) 09:15:19
ふうむ、九段じゃありませんでしたか。しかも牛窓町(岡山)ですらなさそうね。
ちんじゅうはもの知らずなので、宗田理って人を知らなかったのですが、この掲示板には少なくともふたりくらいクダン好きが立ち寄っているふうなので、今日あたりたちまち本屋さんに駆け込んでいたりしないかな。
とりあえずここに公式ページがあるらしい↓
◎ボクラ・コム(宗田理公式ページ)
http://bokura.com/
そんでもって書籍検索 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/20(Tue) 09:22:21
> 人牛(ひとうし)殺人伝説
> 角川書店 (1986-10-10出版)
> 宗田 理【著】〔ソウダ オサム〕
> NDC分類:913.6 本体価:\544
> ISBN:4041602033 365p 15cm(A6)
>
> 張英蘭―中国残留孤児。
> 来日したが肉親に会えず、切々たる思いを胸に離日した。
> その記事を書いたルポライター速水瞭子は、必ず肉親を探し出すと約束した。
> 手掛りは早かった。
> 鳥取に住む女性から、英蘭の母親を知っているとの情報が入ったのだ。
> 鳥取に出張した瞭子。
> だが一足違いで、その女性は、水死体となって川に浮いた。
> そして、次に名乗り出た情報提供者も、鳥取への汽車内で殺された。
> 鳥取地方に残された伝説と、人々の秘められた過去をめぐる連続殺人。
> 気鋭が書下す長編ミステリー。
>
>この商品は在庫がございませんのでお取り寄せになります。「日本書籍総目録」未収録の為、入手は不確実です。
おーのー、入手不確実。
Re: アツユと不老不死の秘密(あと件も) 投稿者:玉兎 - 2001/02/20(Tue) 22:51:27
クダンな地名を探して去年の『ムー』3月号を引っ張り出しました(笑)。
鳥取や島根にはありそうですね!でも福島にクダン伝説は無いみたいな?
一応『ムー』の地名を列挙するとこんな感じですが。
・1827年越中立山に予言する人面獣「くだべ」出現。疫病の予言。
・1836年丹波倉橋山に人面牛身の件(くだん)出没。絵図で家内繁盛。
・1867年出雲地方で牛から人面牛身の件誕生。疫病の予言。
・1892年島根県美保関でラフカディオ・ハーン、件の剥製の存在を知る。
・1909年長崎五島列島で件誕生。剥製が長崎市の博物館に収蔵。
・1926年兵庫県城崎郡豊岡で件の剥製が見世物小屋にかけられる。
・1931年岡山県赤磐郡西部に件誕生。子供を取り殺すとのデマ流れる。
・太平洋戦争中兵庫県神戸にて件を信じれば空襲を逃れられるとの噂。
・1943年山口県岩国市の下駄屋に件誕生。戦争終結の予言。
クダン探索に心血注いでらっしゃる方々の資料の中には
既に宗田理著『人牛殺人伝説』も入ってましたから(↓)
http://www.youkai.org/hakutaku-rou/hakubutushi/kudan/list.html
もしかしたら宗田氏の福島県に関する記述は「創作である」と
判断されたのかも知れませんね。(真実は判りませんが)
ちなみに「牢」も牛ですね。なんか不吉な漢字が並びます。
羊で思い出す食物関係というと「羊羹」…材料が羊だから当たり前か(笑)。
牛と供犠と予言に関しては暇になったらもうちょっと探索してみます(^^)。
Re: アツユと不老不死の秘密(あと件も) 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/21(Wed) 13:08:52
宗田理著『人牛殺人伝説』を、とりあえず図書館で読めないかと
江戸川区内の蔵書リストはあたってみたけどなかった〜っ。きーっ。
>・1836年丹波倉橋山に人面牛身の件(くだん)出没。絵図で家内繁盛。
ふうむ、これはれいの瓦版に載ってる事件のことみたい。
やっぱりクダンってけっこう昔からいる妖怪みたいね。
少なくとも江戸時代には存在してたっぽい。
福島の「地名」の真偽はともかく(なんて地名なんだろう、気になるー)、
けむしさんによれば、『遠野物語』にそれらしい伝説があるっていうし、
東北に関連する場所があっても不思議はないかも。
ああ、そうだ、遠野物語っ、どっかに持ってるはずなんだけどでてこないー。
でもこれなら文庫がそこらで手にはいるかも。本屋行ってこよう。
だから何って事なんだけど 投稿者:ERI - 2001/02/21(Wed) 16:48:01
「ディカプリオ、くだんの彼女と婚約(サンケイスポーツ)」
ってWEBニュースの見出しに思わず笑ってしまったのさ
Re: アツユと不老不死の秘密(あと件も) 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/21(Wed) 20:03:21
いやめでたい、レオ様ご婚約であらせられますか。
もちろん牛女なんでしょうねっ?!>くだんの彼女
で、『遠野物語』買ってきましたわ。
岩波文庫のやつで、『山の人生』が同時収録。
ざーっと目を通したんだけど……うーん、それらしいものは発見できず。
『山の人生』には、ちらっと「牛鬼」のことは出てくるんだけど、
これは東北じゃなく、岡山の美作苫田郡越畑の大平山に生まれたという話だし。
って、過去ログを読み直したら、
けむしさんは「柳田に言及がある」「件伝説は遠野以北には口伝として実在する」といってるだけで、
『遠野物語』とは書いてないのでした。
がーん、別の本か。でかい図書館にでも行かないとだめだなあ。
Re: アツユと不老不死の秘密(あと件も) 投稿者:まうご犬投稿日:2001/02/26(Mon) 19:09:32はじめまして。
なにげなく「くだん」を探していてたどりつきました。
感想。なにげなく探すようなものではなかったですね。反省。
ずいぶん昔、兄から「新潮カセットブック・くだんのはは」をもらって
聞いたのが最初。朗読は市村正親さんでした。
「その洗面器の中身は何っ?」の叫びで、A面が終わり、
オートリバースでないデッキで聞いていたため、テープを裏返すのにもう、手が震えてしまったりして、おほほ。
兄は昭和三十年代後半に広島城内にある護国神社の祭りの見せ物小屋で
くだんをみたような気がする‥などと無責任なことを言っておりましたが、
薄暗いテントの中でみた干からびたミイラ状のちっちゃな牛としか
記憶しておらず、まっことあてになりません。すみません。
Re: アツユと不老不死の秘密(あと件も) 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/26(Mon) 21:19:34
お兄さんはひょっとすると、本当に件の剥製を見たのかもしれませんわよ。
日本とか中国には、
動物の死体をつぎあわせて人魚やらなんやらを作る職人がほんとにいて、
ミイラ化して国内で見せ物にしたり、
外国に輸出してた時期があるんだった気がするのです。
件(くだん)みたいなものも作られててもおかしくないですわ。
作られてたって書くと身も蓋もない感じもするけれど、
人ってあやふやなイメージを形にするの大好きだから、
神様なんか、偶像はだめなのよって言いながら、やっぱり作っちゃったりするじゃない。
それが妖怪のたぐいになると、絵に描いたり彫刻するだけじゃおさまらなくて、
生き物を材料にして作り上げちゃうんだからすごいでしょ?
話がそれちゃうけど、さっきテレビを見てたら、
タイでは水に住む手のひらより小さな象がいると信じられていて、
水象の小さなミイラがあっちこっちで発見されるんですって。
レントゲンをとってみると、中にはちゃんと骨が入ってて、
ひょっとすると本当に水象かもしれないし、
何かの生き物を細工して作った似せものかもしれないんだけど、
幸運を呼んでくるというので大事にされてるみたいよ。
そういうものを大事にしてる国ってかなり好き。
珍獣もいっぴき欲しいなあ、水象のミイラ。
Re: アツユと不老不死の秘密(あと件も) 投稿者:まうご犬 - 2001/02/27(Tue) 14:48:12
作り物とはいえ、そういうものを見せ物にして楽しんだ時代と、見て
楽しんだ人々がいたのよねえ。最近そうゆうのってないなあ。
「手のり象」のテレビ、みてましたよ。うらやましかったな。ああいう
ものをちゃんと大事にしてて。
ところで、「羊」とゆう字、なんですが。
以前なんかの新聞で、「羊という字は価値のあるものにつく」と、
いうのにひっかかって読んだ覚えがあります。例にあげられたのが、
「善」「義」「美」‥とまあ、かなり抽象的な価値あるものでした。
羊ってそこまですごい?
Re: アツユと不老不死の秘密(あと件も) 投稿者:ちんじゅう - 2001/02/27(Tue) 15:18:14
あ、なるほど!
たしかに抽象的で価値のあるものについてるよね、羊。
もしかすると、羊は豊かさの象徴なんじゃないかなあと。
古代中国の牧畜がどういうのだったか調べてないのでよくわかんないけど、
現代の中国だと何千頭もの羊を大草原で放牧してたりするわよね。
たぶん数千年前から羊は大規模に飼ってたんじゃないかしら。
抽象的な発想って、豊かな生活してないとこだわれないだろうし、
羊をたっくさん飼ってることが豊かさの証明になるとしたら、
善や美に羊がついてるのは、わりと納得いかないかな。
一方、牛はっていうと、畑をたがやすのに使ったり、牛車を引かせたり、
お祭りのときに屠って食べたり、神にささげたりするために飼ってはいたろうけど、
羊ほど大規模には飼ってなかったんじゃないかしら(あくまで想像)。
だとすれば、羊とちがって、自由を奪う意味の文字に使われがちなのもわかるし。
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