古川さん、お手紙ありがとうなのよ。
『山海経』にパンダは出てくるのかという問題には、実は諸説あるのです。
中国語では ジャイアントパンダとレッサーパンダのことを、猫熊、または熊猫と呼ぶようですが、どちらの名前も『山海経』にはでてきません。また、「熊のようで白く、手足は黒く、笹を良く食べる」という特徴の生き物も見あたりません。
ただ、パンダは、白熊・羆・貘などと別の名前で呼ばれていた時期もあるらしく、「パンダかもしれないけど、別の動物かもしれないもの」ならば、『山海経』にも何カ所か記述があるようです。
羆 |
(西山経一の巻 中山経九の巻
海外南経 大荒東経 大荒南経 大荒北経) |
あちこちに出てきますが、「羆」とだけあって、説明はありません。羆というのは普通はヒグマのことを言いますが、これをパンダとする説
もあります。
猛とだけあって、説明はありません。どうやら貘(バク)の別名らしいのですが、そのバクという生き物が、古代中国でパンダと混同されていたようなのです。
白楽天という人は 『貘屏讃序』 という本の中でバクについて「象の鼻、犀の目、牛の尾、虎の足をしていて、南方の山谷の中に住む。その皮を敷いて寝ると邪気をさける」と書いています。この説明は、かなり実在のバクに似ています。
しかし、『山海経』の注釈を書いたので有名な郭璞という昔の人によれば、「熊に似て小頭、短い脚、黒白の駁。よく銅鉄・竹骨を舐食す」とあります。これはまさしく、ジャイアントパンダのことじゃないでしょうか?
バクは世界に数種類いますが、アジアで知られているのはマレーバクといって、白と黒のツートンカラーがおしゃれな生き物です。パンダもやはり、白黒の生き物ですから、噂に伝え聞くうちに、バクとごっちゃになっている可能性がありそうです。
結論をいうと、『山海経』にパンダがでてくるかどうかは、やっぱりよくわからないのです。でも、もしいるとしたら、「猛(貘)」という生き物があやしいと思います。