ジャイアントパンダ
(お手紙より)


古川さまからのお手紙
●初めまして。
 突然のメールで、失礼いたします。

 私は、動物のパンダについての愛好会「パンダ研究所」なるものを主宰しております,古川と申します。

 とある人から教えられ、『山海経』なるものに、パンダらしき記述がある!と聞いたのですが、存在するのでしょうか?

 なにかの手がかりだけでもかまいませんので、ぜひとも、お教えください。

 お手数ですが、よろしくお願いいたします。

 パンダ研究所
 http://panda.or.jp/


 
珍獣より
 古川さん、お手紙ありがとうなのよ。
 『山海経』にパンダは出てくるのかという問題には、実は諸説あるのです。

 中国語では ジャイアントパンダとレッサーパンダのことを、猫熊、または熊猫と呼ぶようですが、どちらの名前も『山海経』にはでてきません。また、「熊のようで白く、手足は黒く、笹を良く食べる」という特徴の生き物も見あたりません。

 ただ、パンダは、白熊・羆・貘などと別の名前で呼ばれていた時期もあるらしく、「パンダかもしれないけど、別の動物かもしれないもの」ならば、『山海経』にも何カ所か記述があるようです。
 
(西山経一の巻 中山経九の巻
 海外南経 大荒東経 大荒南経 大荒北経)
 あちこちに出てきますが、「羆」とだけあって、説明はありません。羆というのは普通はヒグマのことを言いますが、これをパンダとする説 もあります。
 
 
(西山経一の巻)
 猛とだけあって、説明はありません。どうやら貘(バク)の別名らしいのですが、そのバクという生き物が、古代中国でパンダと混同されていたようなのです。

 白楽天という人は 『貘屏讃序』 という本の中でバクについて「象の鼻、犀の目、牛の尾、虎の足をしていて、南方の山谷の中に住む。その皮を敷いて寝ると邪気をさける」と書いています。この説明は、かなり実在のバクに似ています。

 しかし、『山海経』の注釈を書いたので有名な郭璞という昔の人によれば、「熊に似て小頭、短い脚、黒白の駁。よく銅鉄・竹骨を舐食す」とあります。これはまさしく、ジャイアントパンダのことじゃないでしょうか?

 バクは世界に数種類いますが、アジアで知られているのはマレーバクといって、白と黒のツートンカラーがおしゃれな生き物です。パンダもやはり、白黒の生き物ですから、噂に伝え聞くうちに、バクとごっちゃになっている可能性がありそうです。

 結論をいうと、『山海経』にパンダがでてくるかどうかは、やっぱりよくわからないのです。でも、もしいるとしたら、「猛(貘)」という生き物があやしいと思います。

 
 
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