ジョヒ魚   ジョヒ
ジョヒ魚

 ジョヒの魚が多い。そのかたちは銚子を伏せたようで、鳥の首に魚の翼があり、魚の尾を持っている。声は磬石(という楽器)の音のよう。この魚は珠玉を生む。

(西山経四の巻)

 
 

絵・文とも『山海経』より


 
 お銚子に鳥の頭、しかも宝石を生むなんて、そんなのイルカ、なんてこといっているとオヤヂ化するのでやめておこう(もう遅い)。
 まてよ。いるじゃないか、有名なのが。
 その生き物は鳥なのに飛べない。翼がイルカの胸ヒレのような形をしていて、足には水かきがあって魚の尾ヒレのように見える。飛べないかわりに魚みたいに上手に泳ぐ。泳ぐのに便利なように体が流線型になっていて、まるでお銚子に手足をつけたみたい。名前はペンギン。卵を生むと自分の両足の上に乗せて、お腹の羽毛で大事そうにかかえて暖める。その様子は宝石の番をしているようにも見えるのだ。
 するとジョヒ魚はペンギンのことなのだろうか。
 だが、ちょっと待った。ペンギンは南極圏付近の島々に住むものだ。さすがの中国人も、二千年も前に南極圏の生き物を知っているとは思えない。

 ペンギンと近い種類で北半球に分布しているものにチドリ目ウミスズメ科の鳥がある。ツノメドリやエトピリカなどがそれだ。これらの鳥はペンギンと違って飛ぶこともできるが泳ぎもうまい。葛西臨海水族園にはエトピリカの泳ぎを見られる大水槽があるが、見ている人が魚と勘違いするほど見事な泳ぎっぷりだ。足には水掻きがあって魚のヒレを思わせる。
 また、十九世紀の中ごろに絶滅してしまったオオウミガラス(ウミスズメ科)という鳥は、翼が退化して飛ぶことができず、まさに北半球のペンギンといえるものだった。
 ウミスズメ科の鳥は、泳ぎやすいように体が流線型で、ちょうどお酒を入れる徳利(お銚子)のような形をしている。泳ぐときはお銚子をたおしたような格好になる。

オオウミガラスオオウミガラス(絶滅種)
 ペンギンが発見されるまではオオウミガラスがペンギンと呼ばれていた。北大西洋から北海にかけて広く分布していたが、体脂肪から脂をとるために乱獲され、1844年に絶滅。

 
エトピリカ エトピリカ
 アイヌ語で「見事なくちばし」という意味のエトゥ・ピリカが名前の由来で、すごく変わった形のくちばしを持っている。
 写真は葛西臨海水族園でもらったエトピリカのバッヂ。
葛西臨海水族園に関するページへ
「ペンギン/海鳥」のコーナーにエトピリカとウミガラスの写真あり。

 
 ウミスズメ科ではないが、北極まで行かなくても見られる面白い鳥がいる。 カイツブリという水鳥で、中国はもとより世界中に約二十種類が分布している。水鳥なので体は流線型でお銚子に首をつけたよう。ペンギンと違って飛ぶことも出来るが、翼が弱々しいので飛ぶよりは泳ぐほうが得意だ。
 また、足が体の後ろのほうに付いていて、陸に上がると直立姿勢になってしまい上手には歩けない。そのためカイツブリは水から離れられない鳥だと信じられていた。
 上野動物園の鳥類館ではカイツブリの泳ぎをガラス越しに観察できる。ウミスズメ科の鳥たちには足指の間に膜があって水掻きになっているが、カイツブリの足は弁足といって、それぞれの指が平べったくビラビラしていて魚のひれっぽい。
 さらに特記したいのは、カイツブリが卵を残したまま巣を離れる時、水草を卵にかける習性があることだ。どうやら保温のためらしいのだが、これまた大切な宝石でも隠しているようではないか。
カンムリカイツブリ
カンムリカイツブリ
この種はカイツブリの中でも比較的良く飛ぶらしい。

 
 ところで、ジョヒ魚について新たなる説が浮上してまいりました。それについては掲示板のログなどをまじえ、次頁でご紹介します。
 
 
前ページへ目次へ次ページへ