ホウ魚  ホウ
ホウ魚
 水中にホウ魚が多く、そのかたちはスッポンのようで、その声は羊のよう。
(西山経一の巻)
絵・文とも『山海経』より

 
 
 本文だけを読むと鳴くのが珍しいだけで普通の亀と思える。

 面白いのは挿し絵のほうだ。亀の甲羅を背負った魚として描かれている。どこかで見たことがあると思ったら、古生代デボン紀に棲息したボトリオレピスという甲冑魚類がこんな姿なのだ。
 ボトリオレスピスは胸ヒレがカニの足のような形をしているが、魚の尻尾があり、上半身が亀に似た甲羅でおおわれていて、ホウ魚の挿し絵に似ている。
 シーラカンスのように、太古の姿のまま生き残った生物だとすれば楽しいが、ボトリオレピスの仲間が生きていたのは四億年も前のこと。いくらなんでも考えすぎだろう。

 『山海経』ではサンショウウオの仲間を手足のある魚と表現していることが多い。本文では手足について触れられていないが、少なくとも挿し絵を描いた人はホウ魚をサンショウウオの化け物と考えていたかもしれない。

ボトリオレピスボトリオレピスの一種
 頭と胴が固い甲羅のようなものに覆われているが、尾にはうろこすらない。
 古生代デボン紀(4億〜3億6千万年前)の地層から化石が出る。

 
 また、前足が二本で、後ろ足は一本の尾ひれのようになっている生き物といえば、アザラシ・オットセイなど鰭脚亜目の動物の特徴だ。

アザラシ・オットセイの関連項目
ロク
三本足亀
ヘイヘイとシュジュ


 

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