挿し絵はありません  リョウギョ
竜魚

 竜魚は陸に住む。かたちは狸のようで、聖人はこれに乗って天下を行く。(海外西経)

文は『山海経』より

 
 
 鯉といえば、滝を上って竜になるとも言われ、日本では男の子の立身出世を願って端午の節句に鯉の形をしたのぼりをたてる。「狸」も「鯉」も発音はli、発音が似ている文字は意味もつながっているのが漢字の法則。陸を行く鯉という意味でわざとけものへんで書いたのだろう。十六世紀の研究家も「鯉」に書きかえている。

 また、陸に棲む鯉と呼ばれる動物が実在する。センザンコウだ。古くは下のような文字を書いてセンザンコウのことをさした。

  リョウリ

 リョウという文字は陵という文字と発音が同じなのですでに紹介した陵魚とも関係がありそうだ。
 

ミミセンザンコウミミセンザンコウ
 中国南部・中部、台湾、ビルマ、インド、ネパールなどに棲息。南米のアルマジロやアリクイに近い動物で、シロアリなどを食べる。体全体に体毛が変化したウロコがあり、このウロコは魔除けや薬にされた。
 センザンコウの仲間にはアリ塚をこわすための鋭い爪があるのだが、参考にした写真ではいまいち目立たなかった。もしかすると子供の写真だったのかもしれない。

 
 中国語では発音が同じ文字をつかって別の意味を暗示させる場合がよくある。たとえば幸福の福は、蝙蝠(こうもり)の蝠と発音が同じなので、コウモリという生き物は中国では幸福のシンボルである。また、字画が多くて書きにくい文字なども、同じ発音の別な文字に置き換える場合がある。
 そう考えると、竜と陵は、日本語の音読みだとどちらもリョウなので、もしやこれも文字の置き換えなのでは……と思っのだが、、現代北京語では竜はlongでリョウはlingなので、どうも違う感触だ。しかし、中国語の発音は地方によって、時代によって、かなり変化しているので、『山海経』の時代にどんな発音だったか……ものすごく気にはなるが、珍獣には手に負えない世界に突入してしまうのでパス。

 『山海経』には竜魚の同類と思える獣がほかにもいる。獣の怪・獺とダツを読みすすめてほしい。

 
 
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