挿し絵はありません  ブンブン
文々
 獣がいる、そのかたちは蜂のようで、分かれた尾に反りかえった舌、よく叫ぶ、その名は文文。(中山経七の巻)
 
『山海経』より

 
 
文文
文文
『百獣図』より
 獣とはいうけれど、ゴキブリでさえ獣と書かれているならこれも虫かもしれない。そういえば文文というのも羽音を連想させる名前だ。
 夏にブーンと飛んできて刺されると痒いあの虫のことを「蚊」という。良く叫ぶというのは羽音のことだろう。
 しかし、分かれた尾と、反り返った舌というのがわからない。一体なんのことを言っているのだろうか?
 本文に蜂のようとあるのでハチの可能性も考えてみよう。

 コマユバチ科のハチにも非常に長い産卵管を持つものがいる。有名なところではウマノオバチだろうか。体の数倍もの長さの産卵管を持ち、馬の尾のように見えるため、中国でも馬尾繭蜂と呼んでいる。この蜂の産卵管は生きているときは一本に見えるが、死ぬと三本に分かれる。

 また、ヒメバチ科のハチのメスにも長い産卵管を持つものがいる。アカアシフシヒメバチはヨーロッパ・シベリア・日本に棲息する。これも死ぬと産卵管がわかれる。


ヒメバチの一種
 ツマグロケンヒメバチのか、それに近い種のメスだと思う。生きている時は写真のように産卵管が一本だが、死ぬと分かれて二本になる。
 虫なので、飛べば羽音くらいはするだろう。しかし、反り返った舌というのがやはりわからない。

 尾が分かれるという特徴に注目すると、鳥類のツバメもあてはまりそうだが、こちらはブンブン唸りながら飛んだりはしないし、舌の問題もクリアにならない。

 
 
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