ヒイ   ヒイ
ヒイ

 蛇がいる。名はヒイ。六本足で四枚の翼がある。これが現れると天下はおおいに旱する。(西山経一の巻)
 
 
 

絵・文とも『山海経』より

 
 
 
 また旱と関係した蛇である。
 翼が四枚で足が六本というのは昆虫の特徴だ。そういえば、トンボのことを英語でドラゴンフライというし、ヒイの挿し絵も四枚羽の竜なのだが、これは偶然の一致だろうか?
 また、四枚の翼というのをエラに見立てると、サンショウウオの幼生とも似ている。

 
 
  ヒイ
肥遺
 蛇がいる。ひとつの首にふたつの体があり、名は肥遺という。これが現れると国はおおいに旱する。(北山経一の巻)

 水中に肥遺の蛇が多い。(北山経三の巻)

絵・文とも『山海経』より
肥遺

 
 

 先のヒイと名前の発音も同じ、蛇で、旱と関連していることも同じ。となれば、同じ生き物だと考えられそうだが、こっちには翼がない。
 トンボにこじつけて考えるなら、こっちは幼虫(ヤゴ)のことかもしれない。トンボの幼虫は水の中で暮らすので「水中に」という北山経の条件にもあう。それに、イトトンボやカワトンボのヤゴは、尻に2本の長いヒラヒラがあって、尾が二股に分かれているようにも見える。
オオモノサシトンボのヤゴ オオモノサシトンボの幼虫
 二股のヒラヒラの顕著な例としてあげてみたが、オオイトトンボそのものは中国にはいないかもしれない。このトンボは昭和11年に東京都葛飾区で発見された種で、学名をCopera Tokyoensisという。
 この種にかぎらず、イトトンボ科・モノサシトンボ科・カワトンボ科の幼虫は尻尾の先に二枚のヒラヒラが目立つものが多い。このヒラヒラはエラで、ここから呼吸しているのだ。
 
 
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