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古典の中のクマバチ
~日本や中国の古典に出てくる虫の記録
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和名 クマバチ(熊蜂)
科名 ミツバチ科 学名 Xylocopa appendiculuta 中名 黄色胸木蜂 竹蜂(近縁種 X.dissimilis) 撮影日 2003/07/03 撮影地 東京都江戸川区 特徴 ・独特の丸い体 ・体が黒い ・胸部に黄色い毛 >他の写真と読み物 |
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『本草綱目啓蒙』は江戸時代につくられた本で、中国で薬にしている動植物、鉱物などが、日本ではなんと呼ばれているか、どういう性質のものかを漢文ではなく日本語で説明しています。
その本に出てくる「竹蜂」は、(どうやらクマバチの仲間らしいのですが)なぜか日本での呼び名はわからないとして、その性質についても中国の本からの引用があるだけです。 ・黒蜂の一種で大きさは指の頭ほどこの特徴を読んでいるとクマバチのことのように思えます。「黒蜂」というのがなんのことかわかりませんが、その名の通り黒いと解釈してみましょう。大きさは指の頭ほどというのですから、大型の蜂であることがわかります。そして、木や竹に穴をあけること。クマバチは春から夏にかけてブンブンと音をたてて飛びまわり、花の蜜や花粉を食べて暮らします。ミツバチのような巣を作らず、代わりに木の幹を食い破って穴をあけ、中に数個の卵を産み付けます。 「黒蜂の一種」「穴をあけるのがうまい」という二点は説明がつくとして、よくわからないのは「黄蜂に似ている」という部分。黄蜂はおそらくスズメバチの仲間なのですが(同じ本の中で大黄蜂=スズメバチと紹介されています)、クマバチ体が黒く、ぷっくり太って丸いイメージです。けれどスズメバチはクマバチにくらべると体が長く、あまり似ていないような気がします。 そのあたりに引っかかったのか、あるいは当時「竹蜂」という名前で日本に来ていた薬の材料が、日本のクマバチとはまるで違うものだったのか、『…啓蒙』の著者は竹蜂についてはわからない、と言っています。 現在、漢方薬に処方されるのはクマバチの近縁種で竹蜂(X. dissimilis)が主流のようです。竹蜂という名前は竹に穴をあけて、フシとフシの間に巣を作ることに由来しています。写真で見ると、竹蜂は腹の上半分にも黄色い毛がはえており、翅も黒くはなく透明に透けて見えるのがクマバチと違っていますが、体つきはクマバチに良く似ています。 ところで『…啓蒙』の竹蜂の項目にチラリと出てくる鸞蜂(らんほう)ですが、伝説の巨大蜂のことで、重さは十余斤、その蜜は碧色で食べれば仙人になるといわれています。中国の本草学は、現実にはありえないような伝説の生物までも「薬になる」として真面目にとりあげるのが伝統ですが、『本草綱目』をあらわした李時珍は、鸞蜂伝説を途方もないデタラメとしています。竹蜂のひきあいに鸞蜂を持ち出しているところを見ると、クマバチ類の丸くて重そうな姿が誇張されて鸞蜂の伝説ができたという考えなのかもしれません。 『山海経』には、クマバチ・竹蜂に関する直接の記述はありません。しいて言えば、文文、大蠭あたりがハチである可能性が高く、特に大蠭はクマバチの類ではないかと考えられます。 |
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