一角獣その2

 
レイ
 
レイ
レイ
西山経一の巻、二の巻--060
中山経八の巻に2回--363,369
中山経九の巻に3回--385,393,396
中山経十一の巻に2回--410,422
中山経十二の巻--470

それぞれ名前だけ登場
 
 

『山海経』より

 
 レイとはカモシカを意味する文字である。記述が頻繁にあることと、その動物について説明が一切ないことからも、良く知られた生き物なのがわかる。郭璞は「羊に似て角が大きく崖のあたりにいる」と紹介している。まさにカモシカのことだ。

 ところが、そんな当たり前の生き物に、わざわざ挿し絵がのこっている。先が前にむかって曲がっているという、変な形の角をもったカモシカである。

チベットカモシカチベットカモシカ
 別名:チルー、ホジソンレイヨウ、チベットレイヨウ。角や毛皮が珍重され、乱獲にあって絶滅の危機に瀕している。
 日本にいるニホンカモシカなどを想像してしまうと、この角は異様にみえるのだが、大陸にはこれと似た角をもつカモシカがいる。たとえばチルーとかチベットカモシカと呼ばれるカモシカの角は、左の図のように前方へゆるやかに曲がって見えるのだ。

 カモシカといえば、一角獣のモデルとしても有名だ。カモシカを真横から見ると、角が一本しかないように見えるため、カモシカが一本角だと信じられていた時代もあるという。

 カモシカの角は羚羊角と呼ばれ、漢方薬として珍重されている。これが西洋に渡って一角獣の伝説を産みだしたのであろう。
 

 
チルーについてはまうご犬さんのサイト まうごてん に詳しいページがある。
 http://www.maugoten.com/kamoheya/chiru.html

 チルー Photo Gallery には頭骨の貴重な写真がある。山海経の挿絵は少しオーバーだが、前方に向かってゆるやかに曲がっている角の様子がわかるはずだ。

挿し絵はありません  ジ

 ジは瞬帝を葬った山の東、湘水の南にあり、そのかたちは牛のようで蒼黒く、一本角。(海内南経)--560

ほかに、
 南山経三の巻--030
 西山経一の巻、二の巻に3回
 北山経一の巻
 中山経八の巻、九の巻 

文は『山海経』より

 
ジ牛 ジ牛『大字源』より
 三日月型の角が、アジアのスイギュウの特徴をよくとらえている。
 馬の怪・一角獣でもすでにふれたが、ジはある種の野牛をさす文字で、「一角で青く重さは千斤」といわれる生き物である。

 ジ牛はスイギュウのことだと言われている。しばしば一本角の生き物とされ、角を薬にすることなど、カモシカの特徴と重なる部分が多い。

スイギュウ
 ネパール、アッサム、ベンガル地方の水辺に棲息する野生のウシ。角は漢方薬の材料としてもちいられる。この三日月型の角はオスにもメスにもある。
 古くから家畜化され、各地で飼育されている。家畜だったものが野生化している地域もある。
スイギュウ
 
 
サイギュウ
 犀牛 犀牛がいる。そのかたちは牛のようで黒い。(海内南経)

 
 角についての記述はないが、犀牛という名前から角の存在は容易に連想できる。また、ウシのようで黒いというのは、ジ牛やキ牛の特徴とも一致している。
 スイギュウの一種だろうか。いや、文字通りサイのこととも考えられる。

 中国ではサイの角を薬にしているが、角の部分だけを外国から輸入していたので犀という生き物がどんな姿をしているのかは知られていなかったと考えられる。また、犀の角は高価なため、スイギュウの角を代用する場合もある。古代中国においてサイとスイギュウのイメージは限りなく近かったのだろう。

犀の土偶 犀の土偶
 たしか漢代の土偶で、珍獣が参考にした本には「犀」というキャプションがついていた。ただのウマなんじゃないかという気もするが、頭についてる3本のでっぱりが角だとすれば犀なのかもしれない。
 古代中国人のサイのイメージは、巨大なウマ(もしくはウシ)に角があり、角の本数や形に特徴があってウシとは違う、というような感じだったのだろう。
 
サイの角
 横浜市金沢動物園で見せてもらったサイの角。 種類はメモしそびれたがアジアではなくアフリカに棲息するサイだったと思う。写真のものは岩にぶつけて折れてしまったものだとか。

 サイの角は毛が固まってできたものなので、折れてしまっても一年くらいでもとにもどるという。実際、この角の持ち主にはすでに立派な角があった。

サイの角

 

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