[参考資料] 狸のひみつ
 
 
 『山海経』には「狸のよう」と表現される生き物が何種類か出てきます。

 今わたしたちがタヌキという言葉を聞くと、キツネと並んで人を化かすので有名な、あのタヌキを思い起こすでしょう。

 ところが、古代中国では「狸」がタヌキを意味するとは限らないようなのです。これは現在の中国で使われている例ですが…
 
狸豹 アジアゴールデンキャット(ネコ科)
猫狸
狸子
ベンガルヤマネコ(ネコ科)
虎狸 リビアヤマネコ(ネコ科)
狸猫 パームシベット(ジャコウネコ科)
斑狸 タイガーシベット(ジャコウネコ科)

 このように、「狸」という文字は、中型の肉食動物(特に山猫など野生のネコ科動物)全般を「狸」という文字であらわす文字です。ある種のキツネのことも狸と呼ぶ場合もあるそうです。

 これまでに取り上げたもので「狸のよう」と言われている生き物の挿絵を見ると、多分に猫っぽいことがわかります。
 
 
類
「狸のようで髦(たれがみ)があり... 」
天狗
天狗
「狸のようで、白い首... 」
どっちもなんだか猫っぽい。

 
 山海経動物記では、狸のような生き物の正体を主にイヌの仲間から探してきましたが、狸=野生のネコ科動物とすれば、その正体も違ってきます。

 天狗は、流星と一緒に落ちてくる獣ということで、特定の動物ではなく、森に住む中型の肉食獣全般を候補にあげておけばいいと思うのですが、問題はです。

 最初は、中国で古くから飼われていたという、獅子のたてがみのような毛並みの小型犬を候補にあげてみました。でも、『山海経』の時代には、獅子っぽい姿の犬種は作られていなかったかもしれないので、どうも、この説はあやしくなったのでした。

  じゃあ、山猫のようなネコ科の動物も候補にあげると……こんなのはどうでしょう?

レオポンレオポン
 これは1959年11月2〜3日に甲子園動植物園で生まれたもの。写真は保育社の「エコロン自然シリーズ 動物1・2」から取り込みました。絵にしちゃうと、まるっきりウソみたいなので(汗)
 山猫みたいな斑があって、獅子のようなたてがみのあるネコ科動物……じつはこれ、ライオンの雌とヒョウの雄から生まれた雑種です。

 自然の状態では滅多にこんな動物は生まれないので、類の正体にあげるのはずるいかもしれませんが、あまりにも『山海経』の挿し絵に似てます。

 それに、レオポンは繁殖能力がないので1代かぎりの生き物というのも気になります。レオポン同士の交尾では生まれないのに、ライオンとヒョウをかけあわせると作れるという特徴が、「自家生殖」で増えるという勘違いのもとになったのかもしれません。

 それとも、こんな雑種を見せ物にしていた人がいたとしたら、珍獣制作の企業秘密を守るために、自家生殖するんだと言ったかもしれません。


 
 たしか、ライオンとトラの雑種のことはライガーというんだったと思います(レスラーの獣神ライガーの名前はここから取ったとか)。この手の人工交雑動物の写真がないかと思って検索をかけてみたんですが見つかりませんでした。どんな姿になるんでしょうね。
 
 

 なお、『山海経』に詳しい注を付けたので有名な郭璞は、ヤマアラシも自家生殖すると書いています。また、霊猫(ジャコウネコなど)も自家生殖すると言われています。もちろん、実際にはどちらも普通にオスとメスが交尾して殖える生き物です。


 
たてがみ狸 関連項目

朏朏
[参考資料]中国の犬
 
 
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