キ
 キ
キ
 獣がいる、そのかたちはカモシカのようで、四本角、馬の尾で距(けづめ)がある。名前はキ。よく舞踏し、鳴くときは自分の名をよぶ。(北山経三の巻)--167
絵・文とも『山海経』より

 
 カモシカのようでけづめがあるというので、どうしても哺乳類を想像してしまうのだが、今までに登場した「四本角」になりそうないきものは……

 
ログタン種の羊
ログタン種の羊
 マンクス・ログタン種や、ヤコブ種などの羊は多角化することが多い
バビルサ
 セレベスに棲息する野生のイノシシで、上顎の牙が顔の皮膚をつきやぶって生えてくるため、角がはえているように見える。下顎の牙も長くのびるため、見ようによっては4本角になるだろう。

 
ヨツヅノレイヨウ キリン
ヨツヅノレイヨウ
 頭の上の1対のほかに、目の上に小さな角がもう1対はえている。
キリン
 キリンも、角状突起とよばれるでっぱりが目立つ個体がある。角状突起は最大で7本になるというが、図のように3本角になるケースが多く、「四本角」と呼べる状態になるかどうかはちょっとわからない。
 アフリカの動物ではあるが、エジプトやメソポタミア経由で古代中国人が存在を知っていた可能性はあるだろう。

 
[関連]

ユウユウ(四本角の馬)
カクジョと夫諸(四本角の鹿)
ゴウエツと諸懐(四本角の牛)
土螻(四本角の羊)
山海経外典・キリン(多角化する生き物の一例)


 
 余談であるが、キリンの角の写真がないか検索していたら、「キリンには2本以上の角が生えることがあると聞くのですが……」という質問とそれに対するレスがついている掲示板にヒットして、どっかで聞いた話題だなあと思ったら、参考サイトとして 山海経外典・キリン が紹介されていた。ううむ世の中狭い、せますぎるー。

 で、関係者が読んでるかどうかわかんないけど、キリンの角について珍獣の考えを少し書くと、キリンのいわゆる「角」の部分はおそらく2本だけで、ほかの部分は「角状突起」と呼ばれる頭部のでっぱりなんじゃないかと思うのです。手元にある図鑑をみると、アミメキリンなどは、たしかに額に突起があって、見ようによっては3本に見えますが、この3本目を角といいきるのはずるいんじゃないかという印象もうけます。実にびみょーなでっぱりなのです。
 角と角状突起とで、解剖学的に言ってどう作りが違うのかは資料がなくてちょっとわからないのですが、ヒトにも、頭の形がいろいろあるように、キリンにも額がでっぱったやつとか、後頭部に出っぱりのあるやつとか、そういうのがいるってことだと思います。

 むしろ不思議なのは、上に紹介したマンクス・ログタン種やヤコブ種の羊。こいつらは、ほんとうにちゃんと「角」として余分な本数がはえてくるのです。しかも、すべての個体が4本になるわけじゃなく、2本角や6本角の個体もいます。最高何本かはわからないけれど、角の数は一定ではありません。はじめて知ったときは本当にびっくりしたものなのです。世の中あなどれませんわ。

 
 
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