|語り部屋珍獣の館TOP山海経博物誌直前に見たページ
  
今昔かたりぐさ2004年版です
2005年版はこちら

1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月

 

一月のお話

0101 十二支のはじまり
 神様が動物に招集をかけた。猫が鼠に「いつ行けばいいの」と聞くと、鼠はうそを答える。猫が神様のところへ行くと、他の動物はもう来ていて十二支に加えられた。だまされた猫は今でもねずみを追いかけている。

0102 浦島太郎
 子供にいじめられていた亀を助けた浦島太郎は竜宮城に招かれて三日間すごすが地上に戻ると三百年が過ぎていた。乙姫様にもらった玉手箱から煙がでてきて、太郎はたちまちお爺さんに。

0103 浪石(浦島太郎の涙石)
 浦島太郎は竜宮城から帰り、玉手箱をあけて爺さんになってしまった。浜辺をさまよい大きな岩の上で横たわり途方に暮れたが、その後どうしたかわからない。この石は涙石と呼ばれ、海が荒れる前に濡れるので浪石と呼ばれるようになった。

0104 雪玉うさぎ
 昔、天の神様が月で雪合戦をしていると、まちがって雪玉が地上に落ちてしまった。美しい雪玉が溶けてしまうことを惜しみ、神様たちは雪玉に手足と長い耳をあたえてウサギに変えた。

0105 隠れ里(一)
 隠れ里に迷い込んだ男は畑仕事を手伝うかわりにお金をもらう。なくなったらまた来いと言われた。大金を手にした男は酔ってこの話を人にしてしまうが、次の日また隠れ里へ行こうとすると、いくら探しても入り口がみつからなかった。

0106 隠れ里(二)
 山で手招きをする女についてゆき、そのまま夫婦になって夢のような暮らしをする。一カ月後に帰ってみると村では三年たっていて、自分は死んだことになっていた。皆に問いつめられ女のことを話した途端、気を失って倒れてしまった。

0107 かちかち山
 お婆さんを殺して食べた悪い狸を兎が柴刈りに行こうと誘う。「カチカチ言うのはここがカチカチ山だから」と説明しながら背中の薪に火をつけてこらしめる。大やけどをして寝込んだ狸を湖に誘い、泥船に乗せて沈めてしまう。

0108 鶴女房
 怪我をした鶴を助けた男の家に女が現れて嫁にしてくれという。嫁が織る布は高く売れたが、織る姿を誰にも見せない。男がこっそり見ると鶴が自分の羽を織り込んでいた。本性を見抜かれた妻は鶴になって去ってゆく。

0109 枯野船
 天までとどく巨大な木を切ってつくられた船は、帝がお飲みになる水を運ぶのに使われていたが、古くなったので焼いて処分しようとしたところ、どうしても焼けずに残る部分があった。これで琴を作るとすばらしい楽器になったという。

0110 鳥呑みじじい
 ある男が鳴き声の美しい鳥を餅でからめて捕まえたが、餅をなめ取っているうちに鳥も呑んでしまう。男の腹で鳴く鳥を見て殿様がご褒美をくれた。

0111 屁こきじじい
 殿様の前でおもしろい屁をひって見せたじいさんはたくさん褒美を持ち帰る。隣のじいさんがまねをして屁をひると、屁といっしょに大便をひってしまい殿様を怒らせた。

0112 猿カニ合戦
 猿は言葉たくみにカニをだまし柿の種とお握りを交換。カニは種から柿の木を育てるが、猿がやってきて実を横取りし、青い実をぶつけてカニを殺してしまう。臼・蜂・栗が仇討ちをかって出て猿をこらしめる。

0113 大工と鬼六
 大水にも落ちない橋をと依頼された大工は自分の目玉とひきかえに鬼に橋をかけてもらう。「お前も目玉は大事だろう、オレの名を言い当てたら勘弁してやる」と言う鬼。大工は子供たちの助けで鬼の名を言い当てる。

0114 さとり
 「さとり」は人の心を読む化け物。ある男が山小屋で火にあたっているとさとりがやってきた。男が柴を折って火にくべようとすると、柴がはねとんでさとりの顔にあたった。さとりは「人間は心で思わないことをする恐ろしい生き物だ」と逃げてゆく。

0115 御徳政(ごとくせい)
 翌日には御徳政が出るというので、欲張りな宿屋は客から持ち物を全部あずかって返さなかった。訴えを聞いた北条泰時は「宿屋は旅人のものを返さなくてよいが、旅人も借りた布団や部屋を返さなくてよい」と裁き、宿屋は反省して旅人の荷物を返した。

0116 猿の肝
 海の王様の病気は猿の生き肝を食べれば治る。クラゲが猿に理由を話すと猿は「肝を忘れて来た」といって家にもどり帰ってこなかった。間抜けなクラゲは罰として骨を抜かれ、今のようにぐにゃぐにゃになった。

0117 鳶不幸
 鳶(とび)の息子は根性曲がりで、いつも言われたことの逆をやる。父親は自分の墓は山に作ってほしいと思い「海に投げてくれ」と言い残して死んだ。父の死を経験して性根をいれかえた息子は父親を海に捨てたが、どうしても気になるので「海干いよぉ」と鳴く。

0118 笑う骸骨
 笑い声をあげる骸骨を拾った男は見せ物にして評判になる。殿様のお召しで城にあがるが骸骨は笑わず男は無礼討ちに。すると骸骨は笑い出し、今殺された男こそ自分を殺して金を奪った追いはぎだと言った。

0119 豆と炭と藁
 豆と火のついた炭と藁が旅をしていた。川があったので背の高い藁が橋になり炭が渡りはじめたが藁が焼けて川に落ちた。見ていた豆が笑いすぎて腹が破けたので針と糸で縫った。今でも豆の黒いところはその時の痕だ。

0120 黄金の瓜
 殿様の前で屁をした罪で城を追われた奥方は旅先で男の子を生む。男の子は金の実がなる瓜の種を殿様に売りに行き「生まれてから一度も屁をしたことのない者がまかねば実がならぬ」と言って殿様の仕打ちをいさめた。

0121 姥捨て山
 年寄りを山に捨てろというお触れに逆らって母親を床下にかくした息子は、母親の知恵で殿様の危機を救った。年寄りの知恵の大切さを知り、殿様はお触れを取り消す。

0122 ねずみの嫁入り
 ねずみの父は娘を強い男の嫁にしようと太陽に話すが、太陽は雲が強いといい、雲は風が強いといい、風は壁のほうが強いといい、壁は自分に穴をあけるねずみが強いと言う。ねずみの父は娘をねずみと結婚させた。

0123 ねずみ浄土
 穴に落としたおにぎりを追って地底国へやってきた男はねずみの宴会に招かれて宝を持ち帰る。悪い男がまねをして宴会におしかけるが、猫の鳴きまねをしてねずみに逃げられる。悪い男は地底で道に迷いモグラになる。

0124 箱根山の天邪鬼
 箱根山に住む鬼は人間たちが箱根に尻を向けて富士を拝むのに腹をたてて、富士山を低くしようと岩を運んでは海に投げた。その時出来たのが伊豆七島で、投げそこねて落ちたのが熱海の初島である。

0125 猫檀家
 寺の猫が年を経て化けた。和尚に正体を見られ寺を出るが、戻ってきて「隣村の庄屋の家へ行け」と行った。庄屋の家では先代の葬式が嵐で何度も中止になり困っていたが和尚が行くと無事すんだ。寺は評判になり栄えた。

0126 力和尚
 むかし桐生の西方寺に力自慢の和尚がいた。急用で江戸へ向かう途中、熊谷で時刻をたずねたら「上州の西方寺さんの鐘が鳴らないのでわからない」と言われる。和尚は「西方寺の和尚なら用事で出かけているよ」と涼しい顔で返事をして先を急いだ。

0127 魚女房
 子供につかまっていじめられている魚を男が助ける。魚は女に化けて男の嫁になった。女の作るみそ汁があまり美味しいので男が様子を見ていると、女が魚の本性を出して汁に飛び込み出汁をとっていた。正体がばれたので魚は川へ帰った。

0128 ねずみ経
 婆さんが経を教えてくれというが、いくら教えてもおぼえない。和尚はデタラメに「ネズミチュウチュウニガサンゾ」と教えて家に帰した。婆さんが仏壇の前で経を読んでいると、天井裏で聞いていた泥棒が自分の事をいわれたと思い逃げ出した。

0129 切れない柳
 お寺の棟木にするために大きな柳を切ろうとした。あんまり太いので途中まで切ると夜になるが、朝になると切り口が閉じてしまう。木挽きの嫁がおがくずを始末してから寝るように助言すると切り口が閉じることなく無事に切り倒せた。

0130 ホトトギスの兄弟
 貧しい兄弟がいた。目の悪い兄のために弟は山芋を掘ってきて食べさせ、自分は芋のしっぽばかり食べていた。兄は弟が隠れてうまいものを食っていると思いこみ、殺して腹を開いてみると、芋のしっぽばかりでてきた。兄はホトトギスになって「おととこいし」と鳴くようになった。

0131 長芋と鬼
 鬼が山からおりてきて人間をとって食おうとある家に押し入ったが、家の者はちょうど長芋をすり下ろしているところだった。芋を角と勘違いして「こんな力自慢がいるんじゃかなわない」と鬼は山へ帰った。
 

(以下、続々とメルマガにて配信中。登録と解除はこちら
 

二月のお話

0201 青砥の殿様
 青砥の殿様が川に一文銭を落とした。家来にお金をやって人を呼び一文銭を探した。たった一文のために大金を払うなんて、と批判されると「川に落としたお金は無駄になるが、人足に払った金はまわりまわって国をうるおす」と言った。

0202 王様の黒い手
 琉球の察度王はハブに咬まれて腕を失った。家臣が自分の腕を切り落として王に献上し、接骨医に継がせた。それからは王の左手は色黒く毛深くなって他の部分とはまるで違うものになったという。

0203 鬼は内(一)
 いくら福を招いても幸せにならないので「鬼は内、福は外」と言いながら豆をまいたら、鬼が遊びに来て金棒を忘れて帰ってしまった。このことが評判になり人が集まったので、金棒を見にくる人お茶や団子を売って幸せに暮らした。

0204 鬼は内(二)
 「鬼は内」と叫んで豆をまいたら鬼が来た。もてなしのお礼にと、鬼はさいころに化けて爺さん博打で大もうけ。その爺さんが地獄へゆくと件の鬼がいて責め苦を免除してくれる。ちっとも苦しまない爺さんを、閻魔大王は地獄から追放する。

0205 牛鬼
 あるところに牛の頭をもつ鬼がいて悪さをしていた。弓の名手に頼み退治してもらった。弓の名手は牛鬼の角を切り取り、お礼にもらった米俵をそえて寺に奉納した。四国の根香寺(ねごろじ)には今でも牛鬼の角がある。

0206 猿と蛙
 猿と蛙が山の上で餅つきをするが、猿は独り占めしようと臼を山から落とす。餅は途中で木にひっかかり蛙がみつけて食べはじめた。猿が俺にもくれというので蛙は熱い餅を猿の顔に落とした。それから猿の顔は赤くなった。

0207 鶴と亀
 亀は鶴に天竺に連れていってほしいと頼む。二匹は互いに棒をくわえて飛び立ったが、下で見ていた子供たちが「亀が鶴にさらわれて行くぞ」と言うので、こらえきれなくなった亀が「違うぞ!」と叫び、そのまま落ちて死んでしまった。

0208 運定め
 山の神様が話していた「男の子は杖一本、下女の娘は塩一升の運命」それを聞いた長者は自分の息子と下女の娘を夫婦にする約束した。しかし成長した息子は下女の娘を追い出してしまう。たちまち家は没落して息子は杖一本でさまよう羽目に。

0209 三枚のお札
 和尚さんからお札をもらい小僧さんは栗拾いに出て山姥に捕まった。お札を使ってなんとか逃げ出すが、山姥は寺まで追ってきた。和尚は頓知で山姥を負かして退治する。

0210 海幸山幸
 漁師の兄と猟師の弟が一日だけ仕事を交換したが、弟は兄の釣り針をなくしてしまった。途方にくれていると、竜宮のお姫様が針をみつけてくれた。弟は兄に後ろ向きで針を返した。それから兄の仕事はうまく行かなくなった。

0211 獣が獲物になる理由
 神様が国造りを終えると獣たちが下界に行きたがった。神様は獣を下界におろすかわりに、人間の役にたつことを約束させた。だから獣たちは狩りの獲物になるのだ。

0212 犬婿殿
 殿様は戦争で手柄をたてた犬に娘を嫁にあたえた。婚儀のあと、犬は七日のあいだ自分をさがさないでくれと言い残して去った。六日目にさがしに行くと、犬は人間の姿になり尻尾だけ犬のままだった。尻尾は隠せばいいと連れて帰り、幸せに暮らした。

0213 黄金子猫
 孝行者の弟が母の墓の前でみつけた子猫は糞のかわりに黄金をひりだした。意地悪な兄が子猫を連れて帰ると糞ばかりしているので怒って殺してしまった。弟が猫の死体を埋めてやると黄金の木が生えてきて弟は大金持ちになった。

0214 梟の染め物屋
 鳥たちはさまざまな色をしているがすべてフクロウが染めたものである。カラスは真っ白に染めてほしいと頼みに来たが、フクロウが間違えて黒く染めてしまった。それからカラスとフクロウは仲が悪くなりフクロウは申し訳なさそうに夜だけ出歩くことになった。

0215 筑波山の由来
 天照大神が下界を見ると気持ちの良さそうな野原が見えた。そこで天から舞い降りて山の上で筑(琴の一種)を奏でると、筑の音にひかれ海の波が押し寄せてきた。それでこの山を筑波山と呼ぶようになった。水の引いたあとにできた湖は霞ヶ浦である。

0216 大男だらだら坊
 だらだら坊という巨人は、筑波山に腰を下ろし、霞ヶ浦で足を洗い、太平洋にむかって立ち小便をした。そのため筑波山はまんなかがへこんでいるし、小便が流れたあとは桜川になった。

0217 羊太夫
 羊太夫は足の速い家来といっしょに群馬から奈良の都まで毎日かよっていた。ある日、家来の脇腹に翼がはえているのに気づいて抜いてみると、家来は走れなくなり、都に行けなくなってしまった。

0218 味噌買橋
 ある男の夢枕に仙人がたって「味噌買橋で良い話が聞ける」と言った。男が橋で待っていると不思議に思って近付いてきた男が「俺も夢を見た。…村の…の家の木の根元を掘れば宝が出るそうだ」というので、行ってほりかえして大金持ちになった。

0219 熊女房
 琉球の王様が船で遭難して無人島に流れ着いた。王様は島にいた雌熊と結ばれて息子をもうけた。王様と息子は通りがかりの船に助けられ琉球にもどったが熊は置き去りにされた。息子がせがむので島にもどると、母熊は浜辺で骨になっていた。

0220 兎の目と耳と尻尾
 兎の子が遊んでいると、地面にぽっかり穴があいて落ちてしまった。落ちたひょうしに土がくずれて大きな石が尻尾の上にドスン。痛くて泣いていると目が赤くなった。そこへ兎の母親がやってきて耳をつかんでひっぱりあげたので耳が長くなった。石に挟まれていた尻尾が切れて短くなってしまった。

0221 でーらん坊
 上州にでーらん坊という大男がいた。浅間山の噴火口に鍋をかけて、猪や鹿をぶちこんで食べて暮らしていた。ある日、でーらん坊は荒船山を枕にして浅間山で足をあたためながら寝ていたが、噴火口にかけた鍋をけっとばしてしまった。信州の温泉が塩辛いのは、鍋から流れた汁が地面に吸われたからだ。

0222 宝化け
 旅の武士が空き家で夜を明かしていると、化け物がでてきたのでつかまえた。化け物は金・銀・銅と壷の精で、床下に埋められていると話して消えた。翌朝掘り返してみると空き家の下から宝のつまった壷が出てきた。

0223 たこ杉
 高尾山にお寺をつくる時、たこの足のように根を張った杉の木が邪魔なので切り倒すことにした。翌朝、人足をつれて見に行くと、邪魔だった根がぐにゃりと曲がって道をあけていた。この杉の木は今も高尾山に残っている。

0224 グズの馬鹿
 グズの母親が死んだ。兄はグズに「坊さんを呼んでおいで。赤い衣を着てるからすぐわかる」と言った。グズが寺に行くと赤い衣の鶏が「コケタンコウ」と鳴いた。グズは「転けたんじゃない、死んだんじゃ」と怒って帰った。

0225 鬼の目玉
 娘は山で道に迷い、屋敷を見つけて宿を乞う。屋敷の主は娘に鍵をわたすが十三番目の部屋だけは開けるなと言う。禁をやぶって開けてみると、開かずの間には鬼の目玉があった。目玉を持ち主に返すと鬼は改心して去って行く。屋敷の主と娘は夫婦になる約束をするが、その直後に屋敷は消え、娘は山奥に取り残されていた。

0226 鬼の刀鍛冶
 「一夜で千丁の刀を打てる者に自慢の娘をやる」という刀鍛冶のもとに鬼が現れて婿にしてほしいと言う。娘を鬼にやりたくない刀鍛冶は真夜中に鶏を鳴かせて鬼を追い払った。逃げながら千丁目を仕上げた鬼の名は鬼神大王波平行安。

0227 猫女房
 貧乏な男は長者が捨てた子猫を拾って飼い始める。子猫が成長すると突然口をきいて、お伊勢さんにおまいりしたいので暇をくれという。しばらくして男のもとに美しい娘が訪ねてきて「自分はあの時の猫でございます」と言った。

0228 打出の小槌
 怠け者の夫は大黒様に祈願して打出の小槌を授かった。帰って妻に見せると、そんな夢みたいな話信じられないと笑われた。怒った夫は小槌をふりあげて「この鼻くそめ」と叫んでしまう。妻は鼻くそになって小川を流れて行ってしまった。

0229 きりなし話
 ある川のほとりにトチノキが立っていた。実が鈴なりになって、ひとつの実がぽとんと落ちて流れてゆく。また落ちて流れて行く。また落ちて流れて行く。また落ちて流れて行く。また落ちて…(以下エンドレス)

(以下、続々とメルマガにて配信中。登録と解除はこちら
 

三月のお話

0301 花咲爺
 畑で犬が鳴くので良いじいさんが掘ってみると宝物が。隣のじいさんが犬を借りてマネをするとゴミばかり、怒って犬を殺す。犬の墓から生えた木で臼を作ると搗くたびに小判が出る。隣のじいさんが臼を借りると臭い餅になり、怒って臼を焼く。良いじいさんが灰を持ち帰り枯れ木にまくと花が咲き、殿様から褒美をもらう。

0302 絵姿女房
 美しい妻に見とれて仕事をしない夫に妻は自分の絵姿を持たせたが、絵が風に飛ばされ殿様の目につき妻はさらわれてしまう。夫は行商人に化けて城へ行くと妻が喜ぶので殿様は行商人と着物を交換する。妻は人を呼んで殿様をとらえ夫と城で暮らす。

0303 瓜子姫
 老婆が川で拾った瓜から少女が生まれ、庄屋の息子と婚礼が決まる。天の邪鬼が瓜子姫の皮をはいで自分でかぶると姫のふりをして嫁入りする。婚礼の前に顔を洗うと化けの皮がはがれて天の邪鬼は退治される。

0304 猿婿入り
 畑仕事を手伝った猿に娘を嫁にやると約束する。猿とともに山へ向かう娘は木の上の花を取ってくれと頼み、もっと上、もっと上の…とねだって猿を木のてっぺんから転落させて殺してしまう。

0305 舌切雀
 意地悪ばばあに舌を切られた雀を追って雀のお宿にやってきたお爺さん。もらった小つづらの中身は宝物。意地悪ばあさんもやってきて大きなつづらをもらって帰ったが、中から出てきたのは毒虫とお化けだった。

0306 おしらさま
 長者の家で飼われている馬がその家の娘に思いをよせるようになり、怒った長者は馬を殺して皮をはいだ。すると馬の皮は娘を包み込み天にのぼって行った。翌年の三月、空から白い虫と黒い虫が降ってきて桑の葉を食べて繭を作った。

0307 朝日長者と夕日長者
 朝日長者の息子は継母にうとまれて家を出る。夕日長者の家で下男として働いていると、実母の霊が現れ不思議な扇をくれる。扇の力で立派な着物と馬を出し、夕日長者の娘を嫁にして幸せに暮らした。

0308 嘘をつくなら
 嘘つき癖のために川に捨てられそうになった小僧は、嘘と頓知で自分の代わりに目の悪い商人を川に投げ込む。屋敷に帰り「一度は死んで竜宮へ言ったが石臼を買いにもどってきた」と嘘をつき、自分を捨てようとした旦那を川に突き落とす。

0309 竜宮女房
 貧乏な花売りが竜宮に招かれて竜神の娘を嫁にして帰ってくる。美しい嫁に目を付けた殿さまは無理難題をつきつけて奪い取ろうとするが、嫁は不思議な力で切り抜け、ついには殿さまから城を奪って夫とともに幸せに暮らした。

0310 天竺へ行った若者
 腹を減らした老人に弁当をやると「天竺の寺へゆけ。途中で会う人の願いを聞いてやれ」という。若者が天竺に行くと弁当をやった老人が現れて、旅の途中で出会った人の願いを叶える方法を教えてくれる。人々の願いをかなえて村へ帰った若者は、長者の願いもかなえて娘と結婚する。

0311 食わず女房
 ケチな男は何も食べない嫁をもらった。男がこっそり様子を見ていると嫁は髪の毛をほどいて大きな口を出し米を食っている。男に気づいた嫁は男を背負いカゴに入れて山へ向かうが、男は道ばたの木につかまって助かる。

0312 鬼が悪さをするわけ
 昔、鬼は悪さをしなかった。ある村の娘を嫁にくれというと、父親が嫌がって娘に会わせなかった。鬼が怒って娘をさらったので、村人がよってたかって鬼から娘をとりかえした。それからというもの人間を恨んで鬼は悪さをする。

0313 命のろうそく
 病気の兄を助けてくださいと祈る弟に、神さまは天から梯子をおろして「命の火をさがせ」と言った。天にはろうそくがたくさんあって、ひとつひとつに名前が書いてある。兄のろうそくが倒れて消えそうなので、もとにもどすと病気が治った。

0314 水乞い鳥
 馬喰の妻は横着もので、夫が「馬に水をやってくれ」と言っても返事だけして働かない。おかげで馬は干上がって死んでしまった。妻は死ぬと真っ赤な鳥になり、水に写った自分を見て火事だと思い、水を飲むことができない。

0315 うぐいすの里
 山で道に迷っていると立派な屋敷にたどりつく。屋敷に招き入れられ遊んで暮らすが「奥の座敷の引き出しだけは開けないで」と言われる。男が引き出しをあけてみるとホーホケキョという声とともに屋敷は消えてしまった。

0316 魚の腹から金が出た話
 ある人が唐に留学して金塊を持ち帰るが、船の中で強盗にあうのが恐くて金塊を海に捨ててしまった。損はしたが命は無事だったというので大きな魚を買ってさばいてみると海で捨てた金塊が出てきた。

0317 怠け者くらべ
 怠け者の息子が旅に出た。腹がへったが風呂敷づつみを開くのが面倒なので我慢して歩いた。口をあけて歩いている人に出会い「腹が減っているならにぎりめしをやるから風呂敷をといてくれろ」と頼むと、その人は「腹はへっとらん。ゆるんだ笠の紐を結びなおすのが面倒で口で張っておるだけじゃ」と言った。

0318 浅草のり
 平将門の従兄弟で平公雅という人の夢に浅草の観音様が現れて「浅草沖でとれる青・赤・黒の海草を食べれば病気知らず」と言った。観音様の法(のり、教え)だから「浅草のり」だと評判になり、今でも東京の名物になっている。

0319 偽本尊
 いたずら者の狐が村人に追われて寺に逃げ込んだ。見るとご本尊様が二体になっていた。知恵者が「ここの本尊様は線香をあげるとうなずくのだ」と言って線香をあげると偽本尊はうなずいた。正体がばれた狐は悪さをやめると約束した。

0320 団子婿
 男は妻に団子を作ってもらおうと「たんごだんご」と言いながら帰るが、小川を飛び越す時に「よっこいしょ」になってしまう。妻に「よっこいしょ」を作れと言うと、訳のわからないことを言うなと殴られ、団子のようなコブが出来た。

0321 ぼたもち蛙
 ケチなお姑さんはぼたもちを棚に隠し「嫁が見たら蛙になれ」と言って用足しに出た。嫁はぼたもちを食ってしまい棚に蛙をいれておいた。お姑さんがもどってきて棚をあけると蛙が跳びだした。

0322 飴は毒
 和尚さんは小僧さんに水飴をやりたくないので「これは大人がなめると薬になるが、子供には強くて毒だからね」と言って外出した。小僧さんは大事な掛け軸をわざと破いて水飴をなめ「死んでおわびしようと毒をなめましたが死ねません」と言って泣いてみせた。

0323 太郎平婆の尻尾
 ある男が辻堂で雨宿りをしていると格子戸の隙間から獣の尻尾が出てきたので切り取った。町に帰ると太郎平の婆さんが痔が痛いと言うので、もしやと思い尻尾を見せると婆さんと思ったのは化け猫で、尻尾を奪って逃げていった。

0324 百足退治
 武士が歩いていると道の真ん中に大蛇がいる。武士がおびえる様子もなく大蛇をまたぐと、竜王が現れて「勇敢なそなたに百足退治をたのみたい」という。武士は巨大な百足と戦い、自分の唾をつけた矢でとどめを刺した。

0325 江戸蛙と京蛙
 江戸蛙は京が見たくて旅立った。京蛙も江戸を見たくて旅立った。途中で出会ったふたりはお国自慢に花を咲かせ、後足で立って行く先を眺めたが、蛙の目が背中についているのを忘れて自分の故郷を見てしまう。ガッカリした蛙は国へ帰った。

0326 桑名屋徳蔵
 徳蔵は大阪の名船頭で、北前船を操らせたら天下一と言われていた。ある雨の夜、徳蔵が船を出すと海坊主が現れて「この世で一番恐ろしいのはなんだ」と言った。徳蔵が「鼻の下一寸四方が一番恐い」と答えると海坊主は消えてしまった。

0327 鰐鮫に飲まれた医者の話
 海の上で船が動かなくなった。誰かが鰐鮫(わにざめ)に魅入られたのだろうというので、乗客がひとりずつ手ぬぐいを投げると医者の手ぬぐいだけが海に沈んだ。医者は海へ飛び込んで鰐鮫に食われたが、腹の中で苦い薬をぶちまけたので鰐鮫は医者を吐きだした。

0328 猫と猟師
 猟師は歳をとった猫を飼っている。ある日猫の前で弾丸を数えて猟に出ると化け物が襲ってきた。弾をすべて撃ち込んでも化け物は死なない。最後に守り弾を撃つと化け物は死んだ。化け物の正体は猫で、死体のそばに茶釜の蓋が落ちていた。

0329 鉄人間
 強い子を生もうと母親が鉛を食べた。生まれた子供は全身が鉄だった。その子は長じて武将になるが首だけは弱く流れ矢にあたって死んだ。死体を戸板につけて立ててみせると、敵は武将が不死身であると思って逃げた。

0330 抜け首病
 ある寺の住職が寝苦しくて目をさますと胸の上に生首が乗っていたが、手で払い落として寝てしまった。翌朝、寺の下男がお詫びにきたので、わけを聞くと自分は抜け首病で、住職に叱られたのを恨んで首が抜けたのだと話した。

0331 相撲は命の洗濯
 三人の男が占い師に「明日までの命」と言われる。どうせ死んでしまうならやりたいことを思いっきりやろうと、ひとりは美味しいものを食べているうちに死んだ。もうひとりは芝居を見ているうちに死んだ。最後のひとりは相撲を見に行って、夢中で応援しているうちに時を忘れて死なずに済んだ。

(以下、続々とメルマガにて配信中。登録と解除はこちら
 

四月のお話

0401 ほらふき比べ
 ほらふき男がほらふき村にやってきて、ほらふき比べをしようと言った。子供が出てきたので親御さんはとたずねると「父は富士山につっかえ棒をしに、母は琵琶湖の穴に栓をしに行った」という。子供ですらこれでは歯がたたぬと、ほらふきは逃げ出した。

0402 雁取爺
 川でひろった木の根から生まれた犬は鹿をとるのが上手。悪い爺が犬を借りるが鹿はとれず怒って犬を殺してしまう。犬の墓から生えてきた木に銭が成るが、悪い爺が木を借りて植えると糞が成った。怒った爺は木を焼いてしまう。良い爺が木の灰をまくと雁が落ちてくる。悪い爺は灰が自分の目に入って屋根から落ちた。

0403 孝行息子と鏡
 あるところに親孝行な男がいた。殿様が褒美をやるというので「死んだ父に会いたい」と言う。殿様は「誰にも見せてはならんぞ」と言って男に鏡を与えた。男は鏡で自分の顔を見て父親と思い喜ぶが、妻は夫の様子をいぶかしく思ってこっそり鏡を見てしまう。自分の顔を見て夫が女を囲っていると思いこんで激怒していると、尼さんがやってきて鏡を見て「安心なさい、女は反省して尼になりましたよ」と。

0404 分別才兵衛
 才兵衛は分別(知恵)があると評判だったが、ひょんなことから庄屋を殴り殺してしまった。死体を賭博所の入り口に立てて、庄屋の声色で「若いもんが昼から博打か!」と叫ぶと若い衆が出てきて庄屋を殴り倒した。持ち前の知恵を駆使して罪を他人になすりつけ、ついには庄屋の家から礼金までせしめる。

0405 大蛇を鎮めたお経
 長者の娘が人身御供に選ばれた。貧しい娘は病気の母に薬をくれることを条件に身代わりをかって出る。死を覚悟した娘がお経をあげると大蛇は成仏して消え、娘は長者からお礼をもらい、母の病気も癒え、幸せに暮らした。

0406 竜宮の馬
 浜に打ち上げられた亀を助けると、竜宮からのお使いが金をひる馬をくれた。隣の爺さんに馬を貸すと、馬は無理をさせられて死んでしまう。馬の墓から生えた大木で作った臼は、搗くと米がわき出す不思議の臼だったが、隣の爺さんが搗くと糠がわいた。

0407 頭山
 大男の頭の上にカラスが糞をした。すると頭の上に桜の木がはえて、花見の客が訪れた。わずらわしくなって木を抜くと池になり釣り人が訪れた。わずらわしくなった大男は自分の頭の池に身を投げて死んだ。

0408 ミルクとサーカ
 ミルクとサーカは各々が一輪ずつ蓮のつぼみを用意して先に花が咲いた方が好きな土地を取ることにした。ミルクが目を閉じて、サーカは薄目をあけて待っていると、ミルクの花が先に咲いたので、サーカはこっそり花をすり替えて「お前たちは見えないところへ行け」と言う。ミルクは喜んで「ここから見えない土地すべてをくれるんですね」と言った。

0409 沢庵風呂
 馬鹿な婿どのは熱いみそ汁を慌てて飲んで火傷をする。お嫁さんが「沢庵をいれたら冷めますよ」と教える。婿どのは熱い風呂にあわてて入って火傷した「おーい、かかや。風呂が熱いで沢庵をいれてくれ」

0410 正直者と仏像
 貧乏な足軽が屑屋から買い取った仏像には小判が隠されていた。売り主は落ちぶれた浪人で、訳を話して小判を返し代わりに茶碗をもらった。茶碗の話が殿様の耳に入り、足軽は出世、浪人もとりたてられて幸せになった。

0411 お椀淵
 ある村の近くにお椀淵と呼ばれる沼がある。冠婚葬祭の前の日に紙にお客の数を書いて沼に浮かべると翌日には必要な数だけお椀が浮いているという。使ったら返すのが決まりだったが、ある男が返さなかったので、二度と椀が浮くことはなかった。

0412 かなめ石
 日本列島は大きなナマズの背中の上にあると言われている。ナマズが暴れると大地震が来るので、鹿島の神が巨大な石柱を地面にさしてナマズの動きを封じている。

0413 甚五郎と桜
 将軍様が江戸城内のもみじ山でお花見をすることになったが、女中があやまって桜の枝を折ってしまった。そこへ大工の左甚五郎が通りがかり、枝に細工してちょいとすげると折れた枝は元通りくっついた。

0414 甚五郎の龍
 上野寛永寺の東照宮には四体の龍のいる鐘楼があった。そのうち一体は左甚五郎の作で、毎夜動き出して不忍池で水をのむので朝になると濡れている。後の時代に龍が出歩くのを恐れた人が、真鍮の鋲で打ち付けたので動けなくなった。

0415 乞食の小判
 貧乏で飢え死にしかけた男の夢枕に大黒様が立って、小判がほしくば橋の下の乞食に借りろと言った。男は無一文の乞食から三百両借りたと証文を書き、自分の家のまわりを探すと小判が出てきた。元手にして儲け、乞食にも借金を返した。

0416 ヤマタノオロチ
 スサノオの神がある村にくると、娘が人身御供にされると泣いていた。神様は村人に酒を用意させ、娘の身代わりになって待っていた。ヤマタノオロチが現れて酒を飲み始めたので頭を切り落として退治した。オロチの体を切り裂くと、美しい剣が出てきた。

0417 地震をおこす大魚
 国造りの神様は眠っている魚の上に大地を造ってしまったので、魚が体をよじると地震になる。北海道アイヌは地震がくると囲炉裏に火箸を刺して「暴れると箸が刺さるぞ」と魚を脅す。

0418 蟹と蛙の競争
 蟹は蛙をのせて走った。それなりに速かった。蛙は蟹をのせると、目をまわさないよう上を見ていろと言った。蟹が上を見ると雲が流れてゆくのですごい速さだと思った。ふとまわりを見ると蛙は一歩も動いていなかった。怒った蟹は蛙の尻をちょん切った。

0419 幽霊にみいられた小坊主
 男前の小坊主が女幽霊に魅入られた。幽霊はなんとか小坊主をものにしようと「宝ものをやるから寺から出ておいでよ」と言った。宝の使い方を聞くと幽霊は言いにくそうに「憎いヤツを叩けば殺せる」というので、小坊主は宝で幽霊を叩き殺した。

0420 ひとつ目小僧
 ある町医者が往診をたのまれて出かけると、ひとつ目の小僧がお茶を運んできたのでビックリ。家のあるじに話すと「こんな顔でしたか」と顔をひとなで、ひとつ目の入道に。医者はあわてて逃げだし、ひと月も寝込んでしまった。

0421 猿地蔵
 あぜで寝ていたじいさんを地蔵と思いこんだ猿は「猿の金玉ぬらすとも地蔵の金玉ぬらすまい」と歌いながら、じいさんを川向こうのお堂に祀り宝物を供えて帰った。隣のじいさんがマネをしたが猿の歌に笑ってしまったので川にうち捨てられた。

0422 くさなぎの剣
 ヤマトタケルは父の命令で関東に蝦夷を退けに来たが、相模の国造にだまされて草原に追いつめられ火攻めにされたタケルは剣で草をなぎはらい難を逃れたので、この剣をくさなぎの剣という。

0423 木更津の由来・おとたちばなひめ
 ヤマトタケルは三浦半島の東海岸で海を見て「またいで渡れそうな小さな海だ」と笑った。それが海の神の怒りをかい、嵐で船が進めなくなってしまった。タケルの妻オトタチバナヒメが海に身を投げると嵐が静まった。上総国に上陸したタケルが妻をしのんで立ち去ろうとしないので、この土地を「君去らず」と呼ぶようになった。今の木更津のことである。

0424 「あずま」のはじまり
 妻に先立たれたヤマトタケルのミコトは沈みがちになりため息をついては「あづまはや」とつぶやいた。そのためこの地を「あずまの国」と呼ぶようになった。

0425 ききみみ頭巾
 心の優しいお爺さんに神様がくれた不思議な頭巾。かぶると鳥や動物の言葉がわかるようになる。動物たちに教えられて長者どのの娘の病気をなおしてやり、お爺さんはご褒美をもらって幸せになった。

0426 大男の山造り
 駿河の大男と上野の大男が山を造る競争をした。上野男は、あとひともっこで駿河男に勝てるというところで朝になり、がっかりして落とした土はひともっこ山になった。駿河男の山は富士山でこの時使った土は今の甲府盆地にあったもの。上野男の山は榛名山で、彼が土を掘ったあとは榛名湖になった。

0427 天狗に貸した手
 ある寺に天狗が現れて和尚に手を貸してくれと言った。和尚がうんと返事をすると、天狗は礼を言って立ち去った。それから和尚の腕は短くなったが三十日たつと天狗がもどってきて腕を返してくれた。お礼にといって火伏せの守り札を置いて行った。

0428 とっつくひっつく
 山で「とっつくひっつく」の声がする。良いじいさんがどっちでもいいぞと返事をすると小判が落ちてきてひっついた。悪いじいさんがマネすると松ヤニがひっついた。家へ帰って溶かそうとし火を近づけたら燃え上がって大やけどをした。

0429 鬼と山伏
 村を荒らす鬼を追っ払うために、山伏は鬼を食事に招いた。鬼の皿には白い石と竹を輪切りにしたものをのせ、自分の皿には豆腐とタケノコをのせた。鬼は石をかじって固さにおどろき、山伏が同じものを平気で食べているのに恐れをなし山へ帰っていった。

0430 しわぶき婆の石
 川越市の広済寺にしわぶき(咳)婆の石というのがあった。咳がとまらない時に炒豆、あられ餅、お茶をそなえて頼むと咳が止まるといわれていた。江戸築地の稲葉対馬守の屋敷には爺の石があり、先に婆に参ってから爺にお参りすればより効くと言われていた。
 

(以下、続々とメルマガにて配信中。登録と解除はこちら
 

五月のお話

0501 金太郎
 足柄山の山姥は雷に打たれて身ごもった。生まれた子は金太郎と名づけられ、山の獣たちと相撲を取り、熊にまたがって馬の稽古をして育ったそこへ源頼光が通りがかり山姥から金太郎をもらいうけ都に連れ帰った。金太郎は長じて坂田金時になった。

0502 桃太郎
 お婆さんが川で拾った大きな桃から男の子が生まれ桃太郎と名づける。桃太郎は犬・猿・雉に黍団子を与えて家来にし、鬼ヶ島で悪い鬼を退治して宝を持ち帰る。

0503 桃太郎(岡山版)
 婆さんが川でひろった桃から生まれた男の子。ある日村の青年たちと山に木を切りに行くが、桃太郎は素手で大木を引き抜いて村に持ち帰った。それを見た爺さんはじっくり、婆さんはばっくり、それでおしまい。

0504 桃太郎(東北版)
 子のない夫婦がひろった桃が翌朝見ると赤ん坊に変わっていた。大きくなった桃太郎は鬼ヶ島に渡り、鬼に黍団子をあたえて眠らせ、その好きにお姫さまをさらって逃げる。鬼は火の車で追ってくるが桃太郎は海に出て逃れる。お姫さまは殿さまの娘だったので褒美をもらって幸せに暮らした。

0505 菖蒲湯
 ある娘のところに男が通ってくる。男のあとをつけてみると正体は死にかけた蛇だった。蛇が「あの娘が菖蒲湯に入らなければいいが」というので、娘が菖蒲湯につかると腹から蛇の子がダラダラと落ちた。それから魔よけの菖蒲湯に入るようになった。

0506 蟹問答
 旅の坊さんが荒れ寺で泊まると大入道がやってきて問答をしかけてきた。「小足八足、大足二足、色紅にして両眼月日のごとし、これ何者」と言うので坊さんは「蟹」と答えて大入道を杖で打った。入道の正体は大蟹だった。

0507 大岡裁き(一)子争い
 ふたりの女がひとりの子供を自分の子と主張する。大岡越前が「子供を引き合い、勝ったほうを母親とする」と言うので互いに子の手を引くが、子供が痛がって泣くので一方の女が手を放した。そこで大岡様は「子を思う者が母」と手を放した女を母とした。

0508 大岡裁き(二)縛られ地蔵
 ある男が昼寝の間に白木綿を盗まれた。大岡越前は現場にあった石地蔵をしばった。集まってきた人々に「それほど地蔵が心配ならば、みなで一反ずつ白木綿を男に寄付してやるがいい」と言い、集めた白木綿から盗品をみつけ、犯人も探し当てた。

0509 鬼の面とお福の面
 娘は鬼の面とお福の面を持って奉公に出るが、意地悪な奉公人がお福の面を隠してしまう。母親に何かあったのだと思った娘が鬼の面を抱えて真夜中に山道を行くと山賊がいて、娘の鬼の面を見て逃げてゆく。山賊の宝を持って家に帰った娘は母と幸せに暮らした。

0510 藁と炭と空豆
 藁と炭と空豆がお伊勢参りに行った。途中に川があったので、背の高い藁が橋になった。空豆と炭はどちらが先に渡るかでもめたが炭が無理やり先に渡った。途中で炭の火で藁が燃え、ふたりとも川に落ちた。豆は大笑いして腹の皮がやぶけた。

0511 后さがし
 ある日神様が帝の夢枕に立ち「この絵とそっくりで、この木靴がピッタリの娘を后にせよ」と言った。帝は「見れば幸せになる絵」と称して人を集めたが、ひとり仕事をやめない娘を見て絵にソックリなのに気づいた。靴をはかせてみるとピッタリだった。

0512 カチカチ山
 親切なお婆さんを殺した悪い狸をこらしめようと、兎は狸を柴刈りに誘い背中の薪に火打ち石でカチカチ火をつけて火傷させる。火傷に苦しんでいる狸を舟遊びに誘い、泥の舟にのせて沈めてしまう。

0513 蝶化身
 旅人が一夜の宿にしようとあばら屋の戸をあけると何千何万という蝶が飛び去って行った。あとには人骨と女の長い髪の毛が残っている。村人に話すと、その家には蝶の好きな女がいて、死ぬと体にウジがわき蝶になったのだと話してくれた。

0514 絵に描いた猫
 猫の絵がうまい男がいて、一日中働きもせず猫ばかり描いていた。そのうち親からも勘当され、着の身着のまま歩いていると、ネズミの大群に両親を食い殺された娘の住む家を見つけた。ネズミは男が描いた猫の絵に食われて全滅した。

0515 ドウモコウモ
 ドウモとコウモは腕のいい外科医だった。ある日ふたりは腕比べをしようと、互いの腕を切っては縫い合わせて元通りにつないだ。次は首をつなげなおそうと同時に互いの首を切り落とした。同時に首が飛んだので、これではドウモコウモならん。

0516 長い名前
 一ちょうぎり、二ちょうぎり、ちょうないちょうざぶろう、ゴロゴロ山のごろべえさく、あっち山、こっち山、とりのとっかさたてえぼし、カンカラカンのかんざぶろう、という名前の子供が井戸に落ちて、友達が知らせに来たが、名前を告げているうちに溺れて死んだ。

0517 金色姫
 姫は北天竺の王女だったが継母に憎まれて殺されそうになる。姫の命を救うため、父王は桑の大木を抜いて作った筒に姫をいれて海に流した。姫は日本に流れ着くが、重い病にかかって死に、その棺の中にカイコと呼ばれる芋虫が生まれた。

0518 からす鍬
 男が畑仕事を終えて帰ろうとすると、カラスが「くわ、くわ」と鳴いた。家に帰り着くとホトトギスが「とうてこー、とうてこー」と鳴くので鍬を忘れたことに気づき、もどろうとすると牛が「もーない、もーない」と鳴いた。

0519 弘法の井戸
 能登国の粟津村井の口は、泉から遠く飲み水に困っていた。ある老婆が水を運んでいると僧侶に水を求められ快く応じた。僧侶はお礼だといって杖で地面を叩いた。するとその場から泉がわき出し、村で水に困ることがなくなった。僧侶の正体は弘法大師。

0520 井戸のない村
 能登国の打越という村では川から遠く水に困っていた。ある日、旅の僧侶が水を求めたが、水を惜しんだ老婆が洗濯に使ったきたない水をすすめた。この村で井戸をほっても水が出ないのはこの時の罰があたったのだと言われている。

0521 エツ漁のはじまり
 弘法大師が川を渡ろう難儀していると、若い船頭が船で渡してくれた。大師はお礼にといって葦の葉をとって川に投げるとエツという魚になった。それからこの地方はエツ漁が盛んになった。

0522 石の芋
 貧乏で芋さえ買えぬ娘が妹の墓に供えるために石の芋を洗っていると、僧侶が通りがかって杖で芋を払い落とした。芋が落ちたところには泉が湧き、そのほとりに芋の葉が茂っていたので生芋を供えることができた。僧侶は弘法大師だったと言う。

0523 蛙女房
 男は子供たちにいじめられている蛙を助けた。その夜、女が訪ねてきて男の女房になる。ある日、妻が法事で出かけるというので後をつけると、大きな水たまりで沢山の蛙が鳴いている場所に行き着いた。男が石を投げると蛙は静かになる。その夜、帰ってきた妻が「誰かが投げた石が坊さんにあたって大騒ぎだった」というので、男は「お前は蛙だな」と言い当てると、正体をあらわして去って行った。

0524 蜂出世
 「竹やぶに竹が何本生えているか一日で数えられたら娘を嫁にやる」といわれ、貧しい男は難題に挑戦するが数え切れない。そこへ蜂が飛んできて「一万三千三百三十三本ぶーん」と言うのでその通りに答えると見事正解。男は娘を嫁にして幸せに暮らした。

0525 油取り
 ある男が「何もしないで御馳走だけ食べられますように」と神様に願掛けをしたら、りっぱなお屋敷に連れて行かれて御馳走でもてなされた。夜中にうめき声が聞こえるので見に行くと、屋敷の主が逆さに吊られ、炭であぶられて油を取られていた。主が「客人が太るまでの辛抱」と言うのを聞いて逃げだし、それからは真面目に働いたという。

0526 弥八郎狐
 寺の和尚のところに弥八郎という狐がやってきて「稲荷に昇格するので京都へ行く間、狐の巻物をあずかってほしい。決して人には見せないで」という。その夜、檀家の者がやってきて「狐の巻物を見せてほしい」と言うが和尚は約束だからと断る。弥八郎狐は京都から帰ってくると、不思議な茶釜をお礼にくれた。

0527 狢退治(むじなたいじ)
 庄屋の妻の腹にイボが三つ出来たのを狢が欲しがって暴れている。旅の山伏が狢たちの歌を盗み聞き、甲斐の三毛四毛犬と越後の文三猫を借りてきて狢を退治して村を救った。犬と猫は村の守り神として祭られた。

0528 子守歌内通
 旅の六部が泊まった家で子守り娘の歌を聞く。「リンカージンとカージンがゴンするをモンすればリョソウをセッすとゴンするぞ。クサのかんむりおっとってヤマにヤマをかさねよ」これを聞いた六部は、家の者が自分を殺す相談をしていると気づいて逃げだした。

0529 寝太郎
 横着者で寝てばかりいる若者は、ある日ハトと提灯を用意して、夜中に庄屋の家の木に登り「わしは八幡太郎である。この村の寝太郎を婿にせねばこの家は滅びるぞ」と言って、ハトの足に提灯を付けて飛ばした。庄屋は神様が来たと思いこんで寝太郎を婿にした。

0530 手長足長デカ鼻
 手長と足長とデカ鼻は一緒に旅をしていた。酒が飲みたくなると足長がひとっ走り買いに行き、腹が減ったら手長はとった魚を食べた。酒に酔ってデカ鼻が寝てしまった。手長がデカ鼻の鼻の中に手をつっこむと何かにふれたので引っぱり出したら町だった。それが今の柏崎である。

0531 おまんまのおかげ
 あるところに働き者の大男がいた。母親は思い上がらせてはいけないと「おまえが働けるのはおまんまのおかげだよ」とさとした。次の日大男は弁当を鍬にむすびつけて一日中昼寝をしていた。母親が叱ると「おまんまに仕事をさせていたんだ」と答えた。
 

(以下、続々とメルマガにて配信中。登録と解除はこちら
 

六月のお話
 
0601 座敷わらし
 その旧家は座敷わらしに守られていたが、三代目が京都の伏見稲荷からお稲荷さんを招いてお祀りすると、急に家がかたむいて没落してしまった。それと前後するように見なれない女の子が村から出るのを見たという人がいる。座敷わらしの引っ越しである。

0602 河童の瓶
 河童に馬をひかれそうになったので、慌ててつかまえてお寺にひきずっていった。和尚さんは「今日は田植えだし殺生はひかえなされ」と河童をゆるしてやった。恩を感じた河童は、耳を近づけると気持ちのよい水音のする瓶を残して去っていった。

0603 水の種
 子供にいじめられている白ヘビをたすけてやると、老婆があらわれて娘を助けてくれたお礼だと言って不思議な水の入った瓶をくれた。水涸れで困っている村の近くで地面に水をそそぐと泉がわき出したので、それからは水に困らなくなった。

0604 爺さんと竹
 天までのびた竹をのぼって月世界まで行った爺さんは月の姫と楽しく過ごした。地上にもどり、婆さんを背負ってふたたび月を目指すが、月の姫との「無言」の約束をやぶった瞬間、婆さんが爺さんの背中から落ちて死んでしまう。

0605 地蔵のしろかき
 足腰のまがったおじいさんが馬を引いてしろかきをしていると子供がやってきて代わりに仕事をしてくれた。その仕事の早いこと、広い田んぼを一日で終わらせてしまった。ところが日没とともに子供はたおれ、慌ててかけよってみると石地蔵になっていた。

0606 鬼婿どの
 水路をふさぐ大岩をどけてくれた鬼に嫁いだ娘は、里から訪ねてきた父親と一緒に鬼の五百里車で逃げる。鬼が千里車に乗って追いかけてくるので、娘は尻をまくって追い払った。

0607 でえろん婿
 庄屋の家に泊めてもらったでえろん(カタツムリ)は朝になると泣きながら「この家の娘が俺のぼた餅食った」と訴えた。娘の口には餡子がついている。無実の娘が怒って婿を踏んづぶすと、殻の中から立派な若者が出て幸せに暮らした。

0608 フルヤノモリ
 貧乏な老夫婦が「この世で一番恐ろしいのは、狼でも強盗でもなくフルヤノモリ」と話している。それを聞いた狼と強盗は逃げだそうとして鉢合わせ、お互いをフルヤノモリと勘違いする。フルヤノモリは雨漏りのこと。

0609 粗忽惣兵衛
 あるところに惣兵衛という粗忽者がいた。町に買い物にいくのに弁当を風呂敷につつんで持って行くが、途中で気が付くと風呂敷は奥さんの腰巻きで、弁当は枕だった。

0610 三人の行商人
 新茶売りが「新茶〜」と呼ばわりながら歩いていると、篩(ふるい)売りが「ふるい〜」と呼ばわりながら歩いている。その後を古金買取り商が「ふるかねぇ〜」と叫びながら歩いていたのでみんなで大笑いしたとさ。

0611 ヒバリ
 ヒバリは金貸しだった。ある日、太陽が降りてきて金を貸りていったがいつまでたっても返してくれず、空の高いところですましてる。そこでヒバリは朝になると「ゼンクレゼンクレ(銭くれ銭くれ)」と鳴きながら昇っていき、夕方になると「クレークレー」と鳴きながらおりてくる。

0612 山の背くらべ
 伯耆国(鳥取県)に大山(だいせん)という立派な山がある。ある日、海の向こうから高さ自慢の山がやってきて背比べをしたところ大山のほうが少し低かった。怒った大山は海の向こうから来た山をけっ飛ばした。大山の隣にある韓山のてっぺんが欠けているのはそのせいだ。

0613 湖山長者
 湖山長者の自慢は一千町歩もある田んぼに一日で田植えを終えること。ところがちょっとした手違いで日没までに田植えが終わらず、長者は入り日を扇子で三度扇ぎ、太陽を呼び戻して田植えを済ませた。その翌日、大地震があり、一千町歩の田んぼは湖の底に沈んだ。

0614 鯛の作り
 馬鹿な息子がいて、鯛はお作りにするのが一番と聞いた。そこで息子はジャガイモを作ったのを思い出し、鯛を畑に植えて三日待った。鯛が腐って目玉が飛び出したのを見て「鯛を作っておいたら芽が出たよ」と母親に報告しに行った。

0615 狼の眉毛
 貧乏な男が世をはかなんで山に行くと狼が出てきた。しかし狼は男を襲わず「お前は真人間だから俺の眉毛を持っていけ」と言った。狼の眉毛をかざすと人間の本性が見える。この評判を聞いた長者さんは、男を自分の跡継ぎに迎えた。

0616 弟切草
 とても仲のよい兄弟がいたが、ふたりして同じ女に惚れて仲違いをし、ついに兄弟で切り合って勝ったほうが女を取ることになった。決闘は兄の勝ちで終わったが、血を流す弟を見て我に返り自分のしたことを悔いた。弟の墓に生えてきた草には血が落ちたような斑があった。この草は弟切草と呼ばれ、妙薬である。

0617 燕と雀
 燕と雀は兄弟だった。母親が死んだとき、雀は野良着のまま飛んでいったが燕は喪服を着て化粧をしてから出かけたので死に目に会えなかった。神様は孝行者の雀には米を食べる許可を出し、燕には一生喪服のまま虫をとって暮らせと命じた。

0618 化けの皮
 蛇が蛙を呑むのを見て、自分の娘を嫁にやるからと言って蛙を助ける。末の娘が蛇の嫁になるが、ヒョウタンに針を詰めたものを呑ませて蛇を退治する。山奥で老婆に出会い化けの皮をもらい、鬼の住みかを無事通過。長者の家で雇われて若旦那の嫁に。

0619 蟻通しの中将
 シナの王から七つの玉が送られてきた。玉に糸を通して返してほしいというのだが、穴が曲がっていて普通には糸が通らない。知恵者と名高い中将が蟻に糸をむすびつけて玉の穴に入れ、穴の出口に蜜を塗った。すると、蟻は蜜にひかれて穴を通り、糸を通すことができた。

0620 榎和尚
 寺に榎の巨木があるので、その寺の住職のことを、人々は榎和尚と呼んだ。みんなが本当の名前を呼ばないのに腹をたてて住職は榎を切ってしまった。すると人々は切り株和尚と呼んだ。仕方なく切り株を掘り返し穴を埋めたら、穴埋め和尚と呼ばれた。

0621 蛇息子
 子供のない老夫婦にやっと授かった息子は何年たっても歩けず頭と足ばかり長くニョロニョロとしていた。その上大食いだったので養いきれなくなり老夫婦は息子を山に捨てた。ある旱の年に山に捨てた息子が蛇の姿で現れて七日七晩雨をふらせてくれた。

0622 狼女房
 喉に骨を立てた狼は肝のすわった男に骨を抜いてもらう。狼は女に化けて男に嫁入りするが、正体がばれてしまう。田植えの季節。狼は一夜で田植えをすませ森に帰った。実った稲は頭をたれなかったので年貢を免れた。

0623 仁王と賀王
 仁王さんは唐の国の賀王と力比べをするために海を渡った。あいにく賀王は留守で奥方が家に入れてくれた。家の中には鉄の柱が二本あり賀王の火箸だということだった。こんなものを指先で扱うようなヤツとは戦えないと、仁王さんはいちもくさんに逃げ出した。

0624 若返りの水
 おじいさんが山で薪をひろっていると泉がわいているのをみつけて飲んでみた。するとおじいさんは見る見る若返って青年になった。おばあさんも水を飲みに行ったが帰ってこない。おじいさんがさがしに行くと泉のそばで赤ん坊が泣いていた。

0625 木挽きの願い
 力のない木挽きは「石をも切れる力がほしい」と七日間の断食をして神に祈った。ところが前よりも力がぬけて仕事にならない。変だと思い、ふと石に鋸をあてて挽いてみたところ簡単に切れた。過分な願をかけたことに気づいた木挽きは神様にあやまった。

0626 甲府盆地
 むかし甲府盆地は大きな湖だった。そこで稲積地蔵さまが山の一部を手で崩して水を抜こうとしたがうまくいかなかった。見かねた蹴裂明神が山を蹴り崩し、穴切明神が大木を抜いて穴を掘り、甲府の水を富士川に流した。おかげで盆地に人が住むようになった。

0627 豆腐屋のなぞかけ
 雲水に禅問答を申し込まれた和尚は、謎かけのとくいな豆腐屋に身代わりを頼む。雲水が指で丸をつくれば豆腐屋は両手で丸を作り、雲水が指を十本出せば豆腐屋は五本だし、雲水が三本出せば、豆腐屋はあかんべーをする。それを見て雲水は逃げ帰った。

0628 うわばみのとろかし草
 腹いっぱいのウワバミが草をたべて腹をへこましたのを見て、樵は草をもって町へやってきた。蕎麦の大食いに成功したら田畑をやるという長者の家で蕎麦を食いはじめるが、途中で腹がきつくなったので厠で草を食べた。樵がもどってこないので様子を見に行くと厠に着物だけが落ちていた。

0629 孝子が池
 病気の母に何かほしいものはないかと聞くと「琵琶湖の水が飲みたい」という。息子は竹筒を腰にさげて水を汲んでくるが、帰ってみると母親は死んでいた。竹筒からこぼれ落ちた水は池になり、孝子が池と呼ばれるようになった。

0630 蘇民将来と茅の輪くぐり
 スサノオの神は巨旦将来の村で宿をたのむが断られる。蘇民将来の村では親切にもてなされた。スサノオは「もうすぐ疫病が来るが、茅の縄で村をかこえば大丈夫」と教えた。また蘇民将来の子孫であると言えば、どのような災厄からも逃れられると教えた。
 

(以下、続々とメルマガにて配信中。登録と解除はこちら
 

七月のお話

0701 便所の神様
 ある時、七福神が集まって家の中のどの部分を守護するか相談することになったが、弁天様は身支度に手間取って寄り合いに遅れてしまう。やっと駆けつけた時には相談は終わっており、弁天様は便所を守ることになった。女神の守る場所なので、便所を汚くしていると罰があたる。

0702 竜宮の嫁
 花売りが売れ残りの花を海に投げると竜宮から迎えがきた。男は竜宮で竜王の娘を嫁にもらい陸に帰った。陸では三年の月日がながれ、男の母は飢え死にしていた。妻は竜宮の生き鞭で母親を生き返らせ、幸せに暮らした。

0703 金をひる馬
 弟は一両で飼った痩せ馬の糞に銀粒をまぜて兄に見せた。兄は馬を五十両で買うがすぐに騙されたと知る。次に弟はひとりでに炊ける釜を兄に売り、最後に病を治す瓢箪を兄の田畑と交換する。兄は瓢箪の効き目をためそうと妻を殴り殺してしまう。

0704 ふしぎな太鼓
 源五郎が拾った太鼓は表をたたけな鼻がのびる。長者の娘の鼻をこっそりのばすと、長者は娘が病気になったと大騒ぎ。源五郎は医者のふりをしてたずねてゆき、太鼓の裏をたたいて娘の鼻をなおしてやった。長者にごほうびをもらい、上機嫌で家に帰った。

0705 ちいさこべの栖軽(すがる)
 ちいさこべの栖軽は帝にお仕えしていた。帝が雷を招いて来いというので雷雲の下へ行き「雷神といえども帝の招きには逆らえまい」と言った。都に帰る途中で落雷があり、雷神が木にひっかかっていたので都に連れて帰った。

0706 座頭の木
 大水の出た日に溺れ死んだ座頭さんを弔ってやると、墓から木が生えてきて花の中で何十人もの座頭さんが笛や太鼓でお囃子をしている。集まってきた見物人からお金をとって、爺さんは幸せに暮らした。

0707 七夕
 朝から晩まで機織りをしている娘の気晴らしに、天の神様は牛飼いの彦星を連れてきたが。娘が仕事を怠けるようになったので、神様はふたりを天の川の両側に住まわせ年に一度しか会えないようにした。七月七日になると鵲がふたりのために橋を渡す。

0708 天人女房
 男は水浴びをしている天女の羽衣をかくした。天女は男の妻になり子供をつくるが羽衣をみつけて天に帰る。男は瓜の蔓をつたって天にのぼり妻と再会するが舅に胡瓜を切れといわれ、その通りにすると胡瓜の水が天の川になり、離ればなれになった。

0709 きゃふばい星
 織姫は天の女子星全員に脚布(きゃふ)を織ってあげるかわりに七夕の夜を晴れにしてくれと頼んだが、あと一枚というところで七夕の夜になった。そのため雨を降らせる星と、その友達が脚布を奪いあうことになり、友達が勝つと七夕が雨になる。

0710 雷井戸(三島神社)
 下谷には雷がよく落ちるので人々が困っていた。神社の神主が竹の棒で雷雲をつっつくと雷が神社の井戸の中に落ちた。井戸に蓋をして悪さをしないと約束するなら出してやるともちかけると、雷は承知して空へ帰っていった。

0711 おいてけ掘
 あるところに人の近付かない池があった。ある日、釣りの好きな男が釣り糸をたれると面白いように魚がかかる。びくいっぱいになったので帰ろうとすると「おいてけーおいてけー」という声がするので、男は魚を放り出して逃げ帰った。

0712 腰折れ雀
 腰の折れた雀を手当してやると、雀がひとつぶの種をもって来た。種に成った瓢箪には米が沢山つまっていた。意地悪じいさんがマネをすると、種から出てきたのは毒虫とお化けばかり…

0713 江戸城の河童
 麹町に十兵衛という飴屋がいた。毎日店じまいする頃に貧しい身なりの子供が来るので飴を一本わたしていた。ある日子供のあとをつけてみると、江戸城のお堀にどぼんと飛び込んで消えてしまったので、河童だったとわかった。

0714 狸僧
 ある寺の山門をなおすために寄付を集めている僧侶がいた。立派な坊さんだったが行く先々で正体は狸だと噂され、心ない者に犬をけしかけられかみ殺されてしまった。死体は三日後に狸になったが悪さをしたわけでなしと、人々は哀れんだ。

0715 木こりの斧
 木こりは使い慣れた斧を川に落としてしまった。すると女神が現れて「あなたの斧が悪い大蟹の右腕を落としてくれました。もう一度斧を投げて、左の腕も落としてください」と言った。そこで木こりはもう一度斧を投げ入れて蟹を退治した。女神はお礼に斧を新品にしてくれた。

0716 売ります買います
 米や味噌をあきなう商人は、不景気で儲けが思うようにならず、普通より小さい升(ます)で売り、大きい升で買うというごまかしを働いた。そのせいで客が寄りつかなくなるが、賢い嫁が気づいて逆のことをしはじめたら「この店は嫁の代になってずいぶん勉強するぞ」と評判になり、大もうけをした。

0717 尾張富士
 尼さんの夢枕にコノハナサクヤ姫がたって、自分が守る尾張富士が本宮山より低いのが悲しい、お参りに来る者に一個ずつ小石を持たせてほしいと言った。以来、尾張富士に登る時は、小石をたずさえて頂上に供えることになった。

0718 ヘソの下
 雷のお嫁さんになった人が五段の重箱を手みやげに里に帰ってきた。一番上には目玉が入ってる。二番目には耳が、三番目には鼻が、四番目にはヘソが入ってる。五番目を開けようとしたら、お嫁さんが顔を赤くして「ヘソの下は見ないでほしい」と言った。

0719 縁起かつぎ
 何かにつけて縁起をかつぐ旦那が畑に大豆をまこうとしていた。そこへ座頭さんが長い刀を持って通りがかったので使用人が「長いものをお持ちですね」と言うと「長いのはサヤばかり」という返事。旦那はサヤばかりの大豆をおそれて仕事をやめた。

0720 三吉さま
 子供のない老夫婦が明神さまに祈願して授かった子は神の子で、十八になると神様になって村を去った。数年後に帰ってきたときは白いヒゲの爺さんになっていて、大水で流された橋をなおしたり、子供と遊んだりして、また姿を消したという。

0721 手まめ足まめ
 豆作りの好きな男が大黒様に「百色の豆を供えますから嫁をさずけてください」と祈願して、必死で働き始める。けれどどうしても一色たりないので「申しわけねえ」と手を合わせると、大黒様は「お前の手豆で百色じゃ」と願いを叶えてくれた。

0722 蜘蛛男
 けちんぼの旦那が雇ったのは飯を食わない男だった。旦那が男と連れだって草刈りにゆくと男は正体を現し旦那をさらおうとしたが、旦那は難をのがれて村人とともに蜘蛛男を焼き殺す。自分のケチが化物を呼んだと悟り、旦那は良い人になった。

0723 龍神の面
 龍神はかぶると人間になる不思議な面をかぶって陸に遊びにゆく。山奥で面をはずして昼寝をしていると、地元の百姓が面をみつけて持ち去った。祭りの時にこの面をかぶって神楽を舞うと、龍神が怒って雨をふらせるようになった。龍神は面を返せと怒っているのだが、雨乞いにちょうどいいので誰も面を返そうとしない。

0724 手なし嫁
 継母に両腕を切られた娘は、放浪の途中で出会った男と夫婦になる。継母がそのことを知り、男が旅に出ている間に偽の手紙を書いて離縁させる。娘があてもなく歩いていると背負った赤子がずり落ちて谷に転げそうになる、あわやというところで腕が生えてきて、気がつくと子を抱いていた。道ばたの地蔵を見ると手がなかった。

0725 日光の女神と赤城山の神
 日光の女神と赤城山の神は中禅寺湖をめぐって戦っていた。赤城山の神は大百足の姿で戦ったが、女神の孫で弓の名手・猿丸に片目を矢で射抜かれて退却した。戦いの跡は戦場ヶ原と呼ばれ、赤城山と日光の神は今でも仲が悪い。

0726 亀の恩返し
 お寺を造るために金(きん)を買いに行った坊さんは、旅の途中で海亀を助けた。海賊に出会って金を奪われ、海に放り込まれると、助けた亀がやってきて陸まで運んでくれた。海賊は商人にばけて盗んだ金を寺に売りにくるが、海に突き落とした坊さんが生きているのを見て改心する。

0727 ぼたもち
 田舎者がお金をためて江戸見物にでかけるが、宿にとまると風呂場に糠と塩があるので団子にして食べた。宿の番頭は田舎では風呂場で食事をするものと思い翌朝は洗面所にぼた餅を置いておいた。田舎者は今度は失敗すまいとぼたもちで顔を洗った。

0728 厳島神社
 平清盛が厳島神社に参拝すると女神が現れて「神殿を一日で建て替えたら妻になろう」と約束した。清盛が手斧で木をけずると削り屑が大工になって仕事をはじめた。もう少しというところで日没になったので扇であおいで太陽を呼び戻した。

0729 音戸の瀬戸
 厳島神社を一日で建て替えた平清盛に、厳島の女神は妻になると約束するが、女神の本性は海に住む大蛇だった。妻になろうぞと迫る大蛇から船で逃げる清盛は、音戸の瀬戸にはばまれて万事休す。清盛が瀬戸をにらみつけると流れが変わって大蛇を押し流した。

0730 虎と狐
 シナの国の虎が日本に渡って狐とかけっこをした。狐はふたごの兄弟を終点に立たせておいたので、何度勝負をしても狐が勝った。虎はくやしがって自分に似た人形を作りヒゲを三本抜いて植え付け、日本に行くように命令した。これが猫の始まりである。

0731 猫屋敷
 猫は行方不明になるとイナバ山の猫屋敷に行くと言われている。ある屋敷の下女が猫をさがしに行き、山奥で猫屋敷をみつけて泊めてもらった。土産包みには小判が十枚入っていた。それを聞いた意地悪な女主人がマネをするが猫に食い殺されて死んだ。
 

(以下、続々とメルマガにて配信中。登録と解除はこちら
 

八月のお話

0801 魍魎(もうりょう)
 あるお役人の夢の中に使用人が現れて「私は魍魎です。今夜から死体を取る当番なのでお暇をください」と言うので許可してしまった。翌日、近所で葬式があり化け物に死体を取られたと言う。慌てて使用人を捜したがみつからなかった。

0802 ひとつ目孫左衛門
 隻眼の孫左衛門は草刈りにでかけて行方知れずに。百年後に帰ってきて「仙人の弟子になった」と語り、また山へ戻った。村人が山へ入ると孫左衛門が出てきて仕事を手伝った。孫左衛門は山で暮らすうちに身の丈が一丈にもなり毛深く、雨や嵐を呼べるようになった。

0803 ひょうすぼ
 ひょうすぼ(河童)は子供とおよぎくらべをして負けそうになったので抱きついて溺れさせた。村人がひょうすぼをつかまえて、あの岩が腐って裂けるまで悪さをしないと約束させた。今でもひょうすぼは岩をさすりながら「早く裂けてくれんかのう」と言っている。

0804 ミョウガの宿
 欲張りな宿の主人はお客から預かった財布を返したくなかった。そこでお客にミョウガ料理をすすめて忘れさせようとするが、逆に宿代をとるのを忘れて損をした。

0805 継母と時鳥(ホトトギス)
 継母は継子に弁当をたのみ、上の畑から「早く来い」と呼んでおいて、継子がのぼってくる間にに山をおりて「何してるの」と急かした。継子は心臓がつぶれて死に、継母は罰があたり時鳥となって、日に八千八声鳴かないと口から蛆がわくようになった。

0806 西行峠
 西行法師は和歌の修行中に、甲斐と駿河の国境で農家の子供にあった。どこへ行くのかとたずねると、子供は「冬青む夏枯れ草を刈りにゆく」と答えた。甲斐では子供でさえこれだけの風流をたしなむことにおどろいて駿河へ引き返した。

0807 チャンコロリン石
 安中の宿では真夜中になると、いつの頃からかチャンコロリンと音をたてながら石が転がるようになった。バケモノ騒動で寂れた安中宿を救うため、獅絃という和尚が経を読みながら石を追いつめ、大泉寺の境内に封印した。この石は今でも寺に残っている。

0808 化けくらべ
 狐は地蔵にばけた。狸が通りがかりおにぎりをお供えすると狐は笑いながら正体を現した。狸は怒って「明日、大名行列に化けるから見てろ」と言って帰ってしまった。翌日、狐は大名行列を見て笑いながら出て行くと、行列は本物で狐は撃ち殺されてしまった。

0809 ほうろく売り
 侍に化けたほうろく売りは長者の家の化け物を偶然やっつけて娘婿になるが、今度は村を荒らす大蛇を退治してくれと頼まれる。長者の娘は夫を嫌って弁当に毒をまぜて渡すが、これが偶然大蛇の口に入ったのでほうろく売りはまたもやヒーローに。

0810 山女
 猟師が山で色白で背の高い裸の女に出会った。男は化け物と思って鉄砲で撃った。記念に女の髪の毛を切り取って行くと、途中で睡魔に襲われ、夢うつつにあらわれた大男が髪の毛を奪って去って行った。

0811 猿神退治
 毎年ひとりの娘を人身御供に取る猿が信州信濃の早太郎には聞かせるなと歌うのを聞いて、ある僧侶が探しに行くと犬だった。犬を連れてもどり女のかわりに生け贄の棺に入ると、犬とともに早太郎をたおす。

0812 東壺屋と西壺屋
 茂衛門と八右衛門が榎の木の下休んでいると、蜂が何かいいたげに木のまわりを飛んでいる。後日、八右衛門が木の下を掘りかえすと小判のつまった壺が二つ出てきた。茂衛門が壺を見せてもらうと底に「都合七つ」と書いてあったので、榎の下を掘りかえすと壺が五つ出てきた。茂右衛門も八右衛門も長者になり、東壺屋と西壺屋と呼ばれるようになった。

0813 木仏と金仏
 長者さんの金仏と、若者の木仏が相撲をとった。長者さんは木仏が買ったら若者に屋敷をやるという。やがて木仏が金仏をぶんなげて、長者さんは金仏を「この役立たず」と叱ったが、年に三度のまんまじゃ力が出ねえと金仏が言うので、恥ずかしくなって逃げだした。

0814 子育て幽霊
 夜になると飴屋に女がやってきて飴を買って帰る。翌朝みるとお金が葉っぱに変わっていた。次の夜も女はやってきた。後をつけてみると、墓場に赤ん坊が捨てられている。女は幽霊で、水飴で捨て子を育てていたのだ。

0815 山姥のお産
 山から大男がやってきて「山姥が子供もって餅ほしい」と叫んでまわった。肝の太い婆さまが餅を担いで行くと「お産で手が足りないから二十一日手伝ってくれ」と言われる。お礼に反物をもらい村に帰ると、村人が婆さまの葬式をあげていた。

0816 竜宮の酒
 村はずれの淵に落ちた男は気が付くと竜宮にいた。乙姫様に酒をふるまわれ三時間ほどして帰ってみると村では自分の葬式をしていた。時は流れ、年老いた男は死ぬ前に竜宮の酒が飲みたいと言う。寺の和尚がお経を読んで乙姫様にお願いすると、酒でいっぱいのひょうたんが浮いてきた。

0817 大あわび
 嵐で漁を休んでいる若い漁師に恋をした乙女は、もう一度若者に会いたいと、怒らせると祟りがあるという大あわびに石を投げて嵐を呼んだ。けれど漁をやめて帰ってくる船の中に若者の姿はなかった。乙女は海にとびこみ大あわびに謝るが嵐はおさまらず、乙女も若者も帰ってはこなかった。

0818 古い枕
 ある人が古い家を借りて住むと病気になってしまった。薬を飲んでも治らないので、家中を調べると薄暗い物置からいつも風が吹き込んでいる。物置の中には枕があった。庭で火をおこして枕を焼くと病気はなおってしまった。

0819 手ぬぐい
 みすぼらしい老人がにぎりめしを恵んでほしいと言うが意地悪な下女はおっぱらう。優しい下女がそっとにぎりめしを渡すと老人はお礼にてぬぐいをくれた。下女が仕事の汗をぬぐうとそのたびに美しくなるので、意地悪な下女もマネをしてブスになった。

0820 河童の手
 子供が河童に引かれそうになったので庄屋の叶之助がとんでいって河童の腕をひきぬいた。よく見ると河童の腕は藁しべだった。夜になると河童が腕を取り戻しに来たので、もう悪さはしないと約束させて返してやった。

0821 弘法様の万年機(まんねんばた)
 機を織る娘にみすぼらしい僧侶が「その布の中のところを切ってくださらぬか」という。こころよく応じると、娘の機織り機はいくら織っても織り尽きず、織った布をいくら使っても尽きることがなかった。娘は年をとり機織りに飽きて織り機を壊してみた。中から白い鳥がでてきて、普通の織り機に戻ってしまった。

0822 沼神の文使い
 娘が沼のほとりを歩いていると河童が現れて手紙を託した。途中で僧侶に出会い手紙を見せると手紙は白紙だった。水をかけると文字が浮きあがり「この女を食べろ」と書いてあった。僧侶はカボチャの茎で手紙を書き直して娘に渡した。娘が下沼の河童に手紙を渡すと「この女に金をやれ」と書いてあったので河童はブツブツ文句を言いながら娘にお金をなげつけて消えていった。

0823 たこの婿入り
 ある娘が立派な魚をとどけてくれる若者と夫婦になる。夫は人に見られないよう早朝に漁にいき、いつも大漁で戻ってくるが、日に日にやせてくるので娘が心配して様子を見に行くと、岩陰で大だこが一本しかない足を海につっこんで魚をとっていた。正体を見られた大だこは海に帰って行った。

0824 たこの足
 お婆さんが海辺で貝をひろっていると、干潟に蛸が寝ていたので足を一本切って持って帰った。蛸の足があんまり美味しいので、次の日も、その次の日も一本ずつ切って帰り、最後の一本になったとき蛸にすいつかれて殺されてしまった。

0825 蛇の恩返し
 貧乏な爺さんが白い蛇の子を可愛がっていた。蛇が大きくなったので蛇は鱗を一枚置きみやげにして家から出て行った。蛇の鱗は黄金の粒を生み出すので、お爺さんは黄金をもとでに商売をおこし、長者になった。

0826 蛇の鱗
 長者の持っている蛇の鱗は黄金の粒を産むと大評判。心の悪い奉公人が鱗を持って逃げてしまった。長者の猫と犬が追いかけて取り戻すが、犬の失敗で鱗は川に落ちてしまう。それから犬は外で飼われ、猫は屋敷の中で飼われるようになった。

0827 八百比丘尼
 酒を買いに来る小僧さんの後をおって竜宮に行った酒屋は手箱をもらって家に帰ると陸では三年たっていた。酒屋の娘が手箱をあけてみると中に人魚がいてうまそうなので食べてしまう。娘は年をとらず八百歳生きたと言われている。

0828 小豆研ぎ(あずきとぎ)
 群馬県勢多郡新里村では村はずれの土橋を夜更けに渡ると小豆をとぐ音がする。見ると老婆が川で小豆を研ぎながら「あずきとごうかひととってくおか」と歌い、こちらを見てヒヒヒと笑う。

0829 ミソサザイ
 ミソサザイが仲間にしてくれというので鷹は「猪をやっつけられたら」と返事をした。そこで猪の耳に入り込んで突っつくと、猪は後ろ足で耳をかけないので苦しんで谷底に落ちていった。おどろいた鷹は仕方なくミソサザイを仲間にしてやった。

0830 狸の金玉
 ある俳諧師が立派な屋敷に呼ばれ、仲間とともに俳句をひねっているうちに、キセルの灰を座敷に落としてしまった。すると畳が動き出し、気が付くと野原に放り出されていた。この話を人にしたら「それは豆狸に化かされたんだよ」と言われた。

0831 西郷星
 西郷さんが死んだ時、西郷さんの故郷、薩摩の方角に真っ赤な星が現れた。また、その星に従うように、白っぽい星が現れたので、こちらは側近の桐野敏秋の星だと言われた。赤いのは火星で、白いのは土星である。
 

(以下、続々とメルマガにて配信中。登録と解除はこちら
 

九月のお話

0901 やろか水
 大雨の日に川へゆくと、向こう岸から「やろうか、やろうか」と声がする。「よこすならよこせ!」と返事をすると、急に水かさがまして、あたりの村を押し流してしまった。

0902 加茂明神
 加茂明神のお札は雷よけに御利益があると評判だが、その境内に雷が落ちたので神主は大あわて。加茂明神おん自ら現れて、雷神のかかとを切り落として追い払った。以来、加茂明神には雷が落ちることはなくなった。

0903 キリシタン・バテレン
 バテレン(神父のこと)が「中を見ないでほしい」と念をおして宿に荷物を預けた。バテレンが帰ってこないので宿のものが中を見ると人形が入っていた。まもなくバテレンが帰ってきてカバンをあけると、人形が「見た見た」と言うのでウソがばれた。

0904 熊と狐
 熊と狐が畑を作り、狐が土の下のものを熊が土の上のものを取ることにしたが、狐がまいたのはカブの種だったので熊は損をした。もう一度畑をつくり、今度は熊が土の上のものを取ることにしたが狐がまいたのはイチゴの種だったので熊は損をした。

0905 蜻蛉長者(だんぶりちょうじゃ)
 蜻蛉(だんぶり)が教えた泉は酒の泉だった。この酒を売って長者になった男には子供がなく神仏に祈願して美しい姫をさずかった。姫は都の天子様に望まれて后になったが残された長者は寝込んでしまった。長者が死ぬと酒の泉は涸れてしまった。

0906 犬の目印
 はじめて京見物にきた田舎者は、宿の前に犬がいるのを見て「これを目印に帰ってこよう」とそこらを見てまわるが、もどってみると犬がいない。犬をさがして歩き回っているうちに夜があけてしまった。

0907 狐のお札
 ある寺に子供がきて小僧にしてくれという。小僧はよく働くが狐だった。和尚に正体を見破られた狐は「寺に空を飛べるお札があるので盗みに来た」というので「ならお釈迦様の行列に化けてみよ」と和尚。狐の化け方があまり見事なので和尚が手をあわせておがむと、狐は空を飛んで逃げてしまった。

0908 ちゃくりかきふ
 馬鹿な息子に商売をおしえようと、茶と柿と栗と麩をもたせて売りに出した。息子は「ちゃくりかきふ」と呼ばわりながら歩くのでちっとも売れない。別々に売るんだよと教えると「茶は茶で別、柿は柿で別」とふれあるくのでやはり売れない。馬鹿につける薬はないと言えば「飲み薬でいいよ」

0909 小さな神様
 海の向こうから小さな神様がやってきた。ガガイモの殻を舟にして着ているものは蛾の皮だった。小さな神様は頭がよく、人々に畑の耕し方や病気の直し方を教えたが、ある日、穀物の穂をバネにして遠くへ飛んで行ってしまった。

0910 旅人の馬
 二人の男が旅をしていた。ある宿屋で一人が出された団子を食べて馬になってしまった。もう一人が逃げ出して、ひと株に七つの実がなる茄子を探して食べさせたので馬になった旅人は人間にもどることができた。

0911 月からふった餅
 世の中に人間がいなかった頃、ある島に男の子と女の子が現れた。ふたりは神様が月から落としてくれる餅を食べて暮らしていたが、ふたりが食べ残した餅を蓄えるようになると餅が落ちてこなくなった。それから人間は食べるために働きはじめた。

0912 外法人形
 ある人が川で人形をひろった。その夜、人形が口をきいて「明日は何がおこる、このように過ごせ、どの方角がよい」などと占った。最初は面白かったが次第にうるさくなり、古老に相談すると板に乗せて川に流すのがよいと言うのでその通りにした。

0913 蟹の甲羅
 おじいさんは裏の池にすむ蟹をかわいがっていた。おばあさんは蟹がきらいで、おじいさんが留守の間に蟹をとって食べてしまった。カラスが「コーラは垣根、身は婆」と鳴くので垣根の向こうを見ると蟹のこうらが捨ててあった。お爺さんが甲羅を拾うと中に酒が入っていた。

0914 白茄子
 和尚さんがゆで卵をたべていると、小僧さんがやってきて「それはなんというものですか」と言う。和尚さんはすまして「これは白茄子というものだ」と答えたが、そこへ寺の鶏が「ホッケボーズコッケコーロー」と鳴くので小僧さんはすかさず「白茄子の親が鳴いてますよ」

0915 養老の滝
 貧しい樵は父親のために酒を買うのを日課としていたが、ついに酒も買えないほど生活に困るようになった。ある日、山奥でみつけた滝の水を飲んでみると、流れているのは美味しいお酒だった。この話が帝の耳に入り、樵は出世して美濃守(みののかみ)に、年号も養老と改められた。

0916 絵のうまい小僧
 絵のうまい小僧が馬の絵をかいてタンスにしまっておいた。麦の実るころ、馬が畑を荒らすので追いかけてくると足跡がお寺に続いている。和尚さんが小僧の部屋をしらべると、馬の絵の足が泥でよごれていた。和尚さんが絵を柱に貼り付けてしまったので、馬は現れなくなった。

0917 菊娘
 菊の花を咲かせるのがうまい男のところに、ある日うつくしい女がやってきて嫁にしてくれという。申し分ない嫁だったが、いつも足が泥でよごれているので、むりやり風呂に入れて足に湯をかけてやると死んでしまった。次の日、庭先の菊の花をみると、どの花もだらんと頭を下げて萎れていた。

0918 吉四六さん(きっちょむさん)
 吉四六さんが馬に薪をつんで売りに行くと餅屋の主人が「馬ぐるみなんぼや」と聞かれたので五十銭と答え、馬ごと持っていかれてしまった。怒った吉四六さんは「この餅は家ぐるみなんぼ」とたずね餅屋がいつもの癖で二十銭と言ったのでまんまと家を手に入れる。

0919 骨なし太郎
 大人になるまで立って歩けなかった男が、ある日立ち上がり、村中の者に松明を持たせ、真夜中に城を取り囲んだ。殿様は敵の奇襲にあったと思い、城を捨てて逃げた。男はまんまと城をうばいとり、新しい殿様になった。

0920 くわしや切り民部
 殿様の娘の葬式に化け物のくわしやが現れた。家来の民部が刀で切りつけたので化け物は逃げていった。何年かして民部が草津で温泉に浸かっていると、顔に傷のある山伏が「若い娘の死体を盗もうとして侍に切られた。必ず仕返しをする」と言って去った。まもなく民部は病気になって死んでしまった。

0921 田舎者と梯子
 田舎者が京見物に行き宿の二階にとまった。ところが二階になど上がったことがないので下り方がわからない。そこへ猫がきて四つ足で降りてゆくのを見て田舎者もマネすると宿の人に笑われた。

0922 栗子姫
 栗から産まれた栗子姫は、長者の息子に嫁入りすることになったが、山姥にだまされて松の木に縛られてしまう。姫に化けた山姥は何食わぬ顔で長者のところに向かうが、とんびが「山姥つれてどこへゆくピンヨロー」と鳴くので正体がばれる。

0923 長命くらべ
 三匹の猿が一個の栗をめぐって長命くらべをした。一匹は「琵琶湖が茶碗の底くらい浅かった時に産まれた」と言い、もう一匹は「富士山が帽子の高さだった頃に産まれた」という。最後の一匹は泣きながら「その頃に亡くした小猿を思い出した」と言った。

0924 おはぎのお代わり
 村の人からおはぎをもらい、和尚さんは一番大きいのを小僧さんにかくれて便所で食べていた。和尚さんがいない間につまみ食いしてやろうと小僧さんもおはぎを持って便所に行ったら和尚さんと鉢合わせ。咄嗟に「おかわりです」と言ってごまかした。

0925 朝子と夕子
 山の東には朝子という頓知のきく娘がいた。ある日、西の村と頓知くらべをすることになり山のてっぺんへ行くと、西からは夕子という頓知娘がやってきた。ふたりは仲良くなり村人を仲良くさせようと「頓知は引き分けだから、山の両側から道をつくり早く仕上げた村が勝ち」とと言った。

0926 百足(ムカデ)のお使い
 百足と蛙が宴会をすることになって、蛙は酒を、百足は肴を買いに行くことにした。蛙がもどってみると百足はまだ出かけていないので、何をモタモタしているのかと聞いたら百足は百本もある足をばたつかせて「まだ草鞋がはけんのじゃ」と答えた。

0927 杓の底抜け子の子の左衛門
 長者さんは長年働いた下男に「杓の底抜け子の子の左衛門」の家を探し当てたら娘を嫁にやると言った。考えながら歩いていると座頭さんに出会い「杓の底が抜けたら柄と側、子の子は孫だから孫左衛門」と謎を解いてもらう。下男は娘と結婚して長者さんのあとをついだ。

0928 炭焼長者
 お姫様は観音様のお告げで炭焼のところに嫁入りした。貧しい炭焼のこと、たちまち生活に困るが、お姫様が小判を見せて「これでなんでも買える」と教えた。炭焼は小判を知らず「そんなもの裏山になんぼでもある」と大笑い。お姫様が見に行くと裏山は一面の小判で光り輝いていた。

0929 ホトトギスとモズ
 ホトトギスは靴屋で、モズは馬方だった。モズはホトトギスからつけで靴を買っていたがいつまでも代金を払わなかった。モズが虫やトカゲを木にさしておくのは、靴の代金のかわりにホトトギスに餌をとってやっているからだという。

0930 猫と南瓜
 猫が主を恨んで殺そうとしている。それに気づいた鶏は「旦那さんを猫がトテコー」と鳴いた。驚いた飼い主は猫を殺して畑に埋めた。そこから蔓がのびて、大きな南瓜が成った。根を掘ってみると猫の目玉から生えていた。
 

(以下、続々とメルマガにて配信中。登録と解除はこちら
 

十月のお話(準備中)
 
(以下、続々とメルマガにて配信中。登録と解除はこちら
 

十一月のお話(準備中)
 
(以下、続々とメルマガにて配信中。登録と解除はこちら
 

十二月のお話(準備中)
 
(以下、続々とメルマガにて配信中。登録と解除はこちら
 
 【今昔かたりぐさ】は携帯電話用のメルマガとして発行する予定でした。そのため、初期の頃に書いたものは 100 文字にこだわって、かなり無理な要約をしてしまっているのですが、諸般の事情で PC 用メルマガに路線を変更して現在に至っています。

◆参考図書◆
(リンク先で通販できます)

 このコーナーで紹介している昔話は、自分の本棚にあった本と図書館で読んだ本を参考にしています。タイトルを覚えているものだけ下にあげてみますが、このほかにもいろんな本からメモをとったような気がします。

三省堂ブックス『日本昔話百選』稲田浩二/稲田和子・編著
 珍獣様が持っているのは 1971年に出た古い版です。2003 年に改訂版が出てたみたいです。

ぽぷら社『日本むかしばなし』シリーズ
 「日本むかしばなし・○○のはなし」というようなタイトルで何冊も出ている子供用の本です。図書館にあった本なのですが、今は購入できないようですね。 

宝文館出版『遠野の昔話』佐々木喜善・著
 タイトルのとおり遠野の昔話を集めた本で、かなりそそられる話が収録されてます。でも現在は入手不能のようです。 

遠藤書店『米沢の民話・雪女房』武田正・編
 米沢の昔話を集めた本で、地元の小さな出版社で作られたものみたいです。現在は入手不能みたいです。

 
|語り部屋珍獣の館TOP山海経博物誌直前に見たページ